見出し画像

小さな宇宙もまた巡る(前編)

あの頃から1年経った今、こんなにも綺麗に同じような季節が巡ってくるとは思ってもみなかった。あくまでも私は断ち切ったつもりでいたのに。自分自身、彼に対するスタンスに変化はあれど、あの頃と何も変わらないシチュエーションで私たちは同じ場所で同じことをしていた。君はどういう気持ちだったのか、最終的に一生解けない疑問を抱くというところまでしっかり同じだ。

ー‘宇宙は巡る‘を私は信じる。


都会の夜が好きだ。きっと私は依存している。
軽快で欲まみれで自由な空間が私を包み込み、溺れる。

その夜私は、親友と大学時代の友人2人と一緒に新宿で呑んでいた。
久しぶりに都内で遊んでいること、大好きな仲間といること、この2つの条件が、私の気分をいつもよりも高揚させた。
この日は根拠こそないが、何をしても上手い方向に行くような日だと思った。

そんな直感を試すかのようになんとなく彼に連絡をしてみようかなと思いインスタを開いてみた。彼のストーリーズをみた。どうやら長崎にいるらしい。もし都内にいるなら久々に会いたかったなと思ったけれど、やっぱりそんなにうまいこといかないか。

まあ、会わなくなって1年くらい経つし、連絡もしばらく取ってないし、急にタイミングなんて合うわけないよな。と冷静に自分に言い聞かせた。

少し残念だなと思ったけれどもやっぱり友達と呑んでいるこの瞬間が大好きなの気にせず楽しんだ。


時間が少し経った頃、今度は特に理由もなくインスタを開いたら、また彼がストーリーズを更新しているから見てみた。
するとどうやら都内に帰ってくるという。
これはチャンスかもしれないと思い、冷静さを投げ捨てて長崎から東京までのフライト時間を調べてみた。中々ちょうど良い時間に着くじゃないか。

ここまで調べたりストーリーズをみてしまったりしているあたり、私は確信犯だなーと呆れてしまう。

とりあえず、気を取り直して彼にDMを送った。

「何時に東京着く?」

ー「今着いた、どうしたの?」

「会おうー!ちょうど都内いるし」


ー「明日仕事昼からだからいいよ、久々だね」

決まった。今日はやっぱりいい日だ。
私はどうして彼に会いたいのか正直あんまりわからない。単純に久々に顔を見たいだけなのか、体目的なのか、好きなのか。


うん、どうせ朝まで都内にいるなら、彼に少し会って泊めてもらうのが一番コスパも良いし性欲もついでに満たせるお得感がある。

そう、彼は私にとってお得な存在なのだ。けれども過去に好きだった相手という歴史があるせいでどうしてもキッパリと‘友達‘だとは言えないのだ。

あーあ、昨日まではもうこんなこともないだろうと思い彼の存在も過去のものとして認識していたのに。

とか色々自問自答したりしているけれども心は確実に喜んでしまっている。

彼の嫌いなところはたくさんある。
女好きで打算的で嘘つきだ。格好ばかりつけていて本質を見せようとしない卑怯な性格。デートは見た目が華やかじゃない私みたいなのを連れて歩きたくないからもっと可愛い子を誘う。でも性欲は満たしたいから人目のつかない夜を選びあたしからの誘いを都合よく使う。きっと1年経ったくらいで、というか何年経ってもそれは変わらないだろう。
彼は一度も私を好きになったっことはないしこれからもない。

後編に続く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?