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【ネタバレあり】映画『アンダー・ザ・シルバーレイク』感想【観終わったあとも楽しめるいいカルト映画】


こんにちは。これです。

今回のnoteは映画『アンダー・ザ・シルバーレイク』の感想になります。去年の10月に公開されたこの映画。『イット・フォローズ』のデヴィッド・ロバート・ミッチェルが監督を務めています。長野では今年の1月に公開予定だったんですけど、なんか延期になって2月に入ってからの公開になりました。

では、感想を始めたいと思います。今回もまとまっておらず、拙い文章ですが何卒宜しくお願いいたします。






―あらすじ― “大物”になる夢を抱いて、L.A.の<シルバーレイク>へ出てきたはずが、気がつけば職もなく、家賃まで滞納しているサム。ある日、向かいに越してきた美女サラにひと目惚れし、何とかデートの約束を取り付けるが、彼女は忽然と消えてしまう。もぬけの殻になった部屋を訪ねたサムは、壁に書かれた奇妙な記号を見つけ、陰謀の匂いをかぎ取る。折しも、大富豪や映画プロデューサーらの失踪や謎の死が続き、真夜中になると犬殺しが出没し、街を操る謎の裏組織の存在が噂されていた。暗号にサブリミナルメッセージ、都市伝説や陰謀論をこよなく愛するサムは、無敵のオタク知識を総動員して、シルバーレイクの下にうごめく闇へと迫るのだが――。  (映画『アンダー・ザ・シルバーレイク』公式サイトより引用)




※ここからの内容は映画のネタバレを含みます。ご注意ください。





あああああああ!!!!!!!!!!!
分っかんねえええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!
何なんだこれは!!!!!!!!!!!!



いきなりの絶叫ですいません。いや、物語としては結構シンプルな話なんですよ。男が女に恋をする→女が失踪→男が探すっていう。これだけ。よくあるストーリですよね。ただこれがまあこんがらがる。セックス、プレイボーイ、スカンク、犬殺し、フクロウの女、任天堂、壁に飾られたカート・コバーンのポスター、陰謀論に放浪民の暗号、ホームレスに貯水池「シルバーレイク」、果てはカルト教団まで。こういった意味ありげなモチーフが滝のように流れて来るんですよね。頭が混沌として理解なんてできるわけもありません。


家賃の支払いにも苦労する冴えない男・サム。そんな中でも女を家に入れて普通にセックスをしています。このサムを演じたのが『ハクソー・リッジ』や『アメイジング・スパイダーマン』などの作品で知られるアンドリュー・ガーフィールド。陰の気を放つオタクキャラを見事に演じていました。ちょっとした挙動から「あ、こいつあまり明るい性格してないな」っていうのが見えるんですよね。仕事もしてないダメダメなキャラなんですけど、そこが却って愛おしかったですね。


ある日、サムは近所に住む女・サラに出会います。このサラを演じていたのは『マッドマックス 怒りのデスロード』などに出演しているライリー・キーオ。このライリーがね、よかったんですよ。温暖なLAですし、下は下着一枚で美脚が堪能できますし、夏感あふれる麦わら帽子も抜群に似合っていました。予告編でもあったプールで泳ぐシーンは特に色気がやばかったですね。その一方で人間の腸を喰ったり、バウバウ吠えるシーンもあったりしてあれですね、こういうの美人がやるのとてもいいです。







そんな折、テレビではLA〈シルバーレイク〉の顔である大富豪が失踪したとのニュースが流れます。それからしばらくしてサラたち一家も失踪。不審に思ったサムはサラの家に忍び込み手掛かりを探そうとしますが、見つかるのは箱に入った人形やガムなど意味の分からないものばかり。そこに別の女Aが現れ、隠れていたサムに気づかずに去っていきます。その後には菱形が横に二つ並んだ不思議な図形が描かれていました。


ここから、サムはその女Aを尾行していき、結果的にバンドのライブ会場に辿り着きます。サムはここで女たちを見失ってしまうわけですが、ここで失踪した大富豪が死んだということが分かります。そこにはサラが被っていた白い麦わら帽子もありました。


サムは必死になってサラの手掛かりを探します。夢の中で犬が殺され、よく分からない人間に追われ、スカンクに臭い分泌液をかけられます。その過程でオタク友だちを訪ねたときのことでした。そのオタクは菱形が二つ並んだマークをの「静かにしてろ」という意味を解説し、さらに陰謀論を唱えます。1ドル札を持ち出してきて、ある一部分を囲み、夜な夜な人間を殺すフクロウ女のマークが描かれている、奴は俺たちを監視していやがるんだと力説を振るいます。


ほら、実際にも陰謀論ってあるじゃないですか。例えば同じ一ドル札でも透かして見ればピラミッドの中央に目が浮かぶ。これは裏で世界を牛耳る秘密組織フリーメイソンの証だっていうヤツ。1ドル札持ってきたときはそれやるのかと思ってヒヤヒヤしましたもん。


さらに、この映画の陰謀論は留まることを知りません。物語の中盤でサムはあるソングライターのもとを尋ねます。そのソングライターは全ての曲に暗号を仕込んであり、また自分の作った曲によって時代を作ってきたと、数々のヒット曲は自分の仕業なんだと語ります。全てを裏から操る黒幕。陰謀論好きにはたまりません。


あと、この映画は音楽も結構凝っていたんですけど、このソングライターはピアノを弾きながら語るんですよね。様々な聞き覚えのある曲、お前生まれてへんやんけっていう昔のクラシック曲までを弾くんですが、そのなかで私のツボにハマったのがニルヴァーナの「Smells Like Teen Spirit」をやってくれたこと。あの聞き覚えのある、結構簡単にできるのでギター初心者が弾いてドヤ顔をするというリフがピアノで再現されていて、テンションが上がりました。私もニルヴァーナ好きなんでカート・コバーンのムスタングと共に持ってかれました。


で、このソングライターをサムはどうしたかっていうと、その顔をボコボコに叩きのめしたんですよね。ムスタングで。今まで陰謀論を信じていたけれど、いざ陰謀論を目の前にしてみると気色が悪くなってしまった。だってそうですよね。全部陰謀論のせいにして黒幕がいると思い込んでいれば楽ですもん。目の前の事象に向き合わなくて済みますからね。簡単です。ただ、サムはそんな陰謀論を原型がなくなるまで叩き潰しました。ここに私はサムの陰謀論との決別を見たような気がします。


さらにサムは映画終盤、もう一度この陰謀論と対峙します。「我々は何かによって操られている」とするカルト教団がそれです。彼らの言説をいったんは聞いていたサムですが、信者が入信させようと誘うときに、サムは彼らに背中を向けているんですね。これはまさしくサムが陰謀論を拒絶しているっていうことを表していると思うんですよ。今までのオタク的思考から卒業しようとしているというか、そういった内面的な変化も描いているんじゃないかと感じました。







と、このように『アンダー・ザ・シルバーレイク』はサムの内面的な変化を描いた映画でもあるんですけど、それがポップカルチャー盛り盛りで描かれているんですよね。ヒッチコックをはじめとした数々の名前も知らない映画、R.E.M.やニルヴァーナなどのオルタナティブなロックンロール。オリジナルバンドである「イエスとドラキュラの花嫁」のUSバラード。さらにはマリオやゼルダの伝説などのジャパニーズカルチャーまでもが合わさって、まさにカルチャーのごった煮、闇鍋状態です。


これだけだと一見カオスなんですけど、実はちゃんと秩序が保たれているんですよね。それはそれぞれのカルチャーが出過ぎず埋もれ過ぎずっていうちょうどいい塩梅を保っていたのもあるんですけど、主人公であるサムの目的がはっきりしていて、最後までブレていないっていうことも大きいと思うんですよ。サムの目的は「サラを探し出すこと」ですよね。そしてその行動原理はサラに対する恋情。恋する気持ちという普遍性のある心理で動いているからこそ、サムの奮闘ぶりを自分事として見ることができる。応援したくなる。この映画を評して「怪作」だったり「カルト映画」っていう言葉が飛び交っていたと思うんですけど、私は確かにカルトな部分はあるけど根っこはすごく真っ当な映画だなと感じました。ある意味では王道を行っていて、そこが好きですね。




そして、この映画の一番好きなところとして私が挙げたいのは知的好奇心が刺激されるということ。『アンダー・ザ・シルバーレイク』には多くの暗号や謎解き要素が入っていました。例えば「イエスとドラキュラの花嫁」の曲に隠されたメッセージを解く場面。ここでは逆再生させることで隠しメッセージを聞こうとするんですけど、そんなに上手くいくはずもなくあっさり失敗してしまいます。ただサムは諦めません。考え続けた結果、単語の文字数が関係していることを突きとめます。


歌詞カードの解説と歌詞を照らし合わせていくサム。ここで私も一緒になって謎解きに参加していました。「UNDERは5文字で、THEは3文字で…」と何度指折り数えたか知れません。「タイトルを並び替えると「SHE」や「HER」って単語が出て来るな」って思いながら、自分も映画に参加しているような感覚を味わっていました。それで、「頭で数えていると訳分かんなくなるから帰って紙に書いてみよう」とか、そんなことを考えていましたね。


で、実際に帰って紙にペンで書いてみたんですよね。「UNDER THE SILVER LAKE」と「BEWARE THE DOG KILLER」って。で、映画の中に「751」っていう数字の羅列があったので、その通りに読んでみて「HVE」とか「RGK」とか訳分かんない文字の並びに当たって。「UNDER THE SILVER LAKE」と「BEWARE THE DOG KILLER」って同じ18文字だ!これは繋がるぞ!と思っていろいろやってみたけど結局繋がらなくて。でも、こう考えている時間って楽しいんですよ。『アンダー・ザ・シルバーレイク』は考える楽しさというものに気づかせてくれますし、考える気にさせるのも上手いし、何より映画だけで完結させてくれないので、そういう意味じゃとてもいい映画だなと感じます。







それに、この映画は最初から最後まで意味ありげなモチーフをこれでもかと投入してきます。映画を観終わって後悔しているのが、最初にピンク→水色→黄色だったかな。その一色をバックに動物の絵が映されるカットが三つ続くんですね。これいきなりだったのでちょっと面喰って瞬きをしてしまって、少し見逃してしまったんですよ。たぶんこの映画を読み解くうえでキーになるカットだと思うので、ここを見逃してしまったのは痛かったですね。


それでもってエンドロールにも「B=A」とか、映画に全く出てこなかったネッシーとか、犬が首をつっている絵だとかが流れてきて、一種の種明かしをしてくれているので目が離せません。もちろん映画の中でも次から次へと意味のあるモチーフが続き、脳に休むことなく回転を続けさせます。「次は何が出るんだろう」という予測不能な楽しみがあって、140分と長めの上映時間もあっという間に過ぎていったんですよね。体感時間では今年観た映画の中では一番短く感じました。


でもって、140分という長尺ですから記憶力の悪い私は最初の方をもうあまり覚えていないんですよ。悲しいことに。なので観終わってからすぐさまもう一回観たいと感じました。今度はメモを取りながら(実際上映中に後ろのオジサンはメモを取りながら見ていた)、より理解できるように、それでも理解できるとは思えませんけど、2回目に臨みたいなと。そう思ったのもたぶん今年では初めてのことですね。去年も『ペンギン・ハイウェイ』ぐらいでしたし。なのでDVDが出たらもう一回観ようと、そう思えるぐらいには私この映画好きですね。







最後になりますけど、この映画の中で「上層階級だけが見ている世界がある」みたいなセリフがあったんですよ。マスコミが真実を報道しているとは限らない。上層階級は下層階級の人が知らないことを知っているみたいな感じのセリフが。これがまさしく『アンダー・ザ・シルバーレイク』っていう映画を表しているなって思うんですよね。


映画を観て考察できる人っているじゃないですか。私は出来ないんですけど、その人たちと私って同じ映画を観ても見えるものが違うんですよね。一を聞いて一を知る私と、一を聞いて十を知る考察家の方々。それは多かれ少なかれどの映画にもあるんですけど、『アンダー・ザ・シルバーレイク』は特にその違いが大きい映画だと思います。なのでこの映画を観て考察できる人がホント羨ましい。これ書き終えたらちょっと他の人が描いた考察や解説を覗いてみようっと。それによってこの映画をもう一回観たとき面白く感じるでしょうし。では、行ってきます。


お読みいただきありがとうございました。

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