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断片 世界の終わりがそこで見てるよと

 出かけるたびにウイルスの侵入を防げたかどうか、いちいち気にしなければいけないことが、やはりこの二年ほど不便ではある。でもマスクは意外と快適なもので、これはウイルス云々というよりも、顔を覆うことで他人からの視線を遮断し、軽い匿名性を得て安心できるという、そのような点で気楽なのである。誰が誰だかわからんのだ。

 友人とヒゲの話をする。私はいま伸ばしっぱなしであり、ただ生来濃く生えるほうではないので、なんだか楽なことである。口ヒゲとアゴヒゲがある。アゴのほうは南アゴヒゲ共和国と名付けた。これに対し口ヒゲのほうは独裁制の軍事国家である。名前はまだない。くちびるの下にわずかにあるヒゲ、こちらは永世中立のスイス的な国という設定など、そのような話題。馬鹿いってないで剃りなさいよって話か。

 トンガ。ニュースでは陸地が消えたとかいってた。現地の状態もさることながら、噴火によってエアロゾルが飛び、気温が世界的に低下、のち食糧不足、という流れが語られているわけで、ああ、こうして世界は終わるのかもしれぬ。大きな物語は戦争以外にもあったのだ。準備はいいかね。かっ食らえ、ここからの地獄。

 セルジウ・チェリビダッケ、と聞いて何か心がざわついた方はスキ押しといてください。今日ミュンヘンイヤーズのボックスが届くので楽しみ。この指揮者はハイドンをベートーヴェンのように演奏し、ベートーヴェンをブルックナーのように料理する。じゃあブルックナーはどんなことになるんだろうな。それまだ未聴。ともあれ音楽の大聖堂を作れたマエストロよ。モツレクの緊張感もイカす。

 なんだか眠れなくて、これを書いているいま現在というのは夜中のこと、文体は崩れているし、話はあちこちだし。だいたい断片とか断章とかというものはフェルナンド・ペソアに憧れての所業なのだ。あの鋭くソリッドな『不穏の書』を読めばまねたくなる。実は以前、断片ないし断章用にとハードカバーのノートを買って書いていた。二、三十ページは書けたと思う。だがその後放置して長い。またやり始めてもいいかもしれない。まずそちらに書いてこちらに書き写すとか。やるか。


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