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第一章 出会い理解する ~アセスメント~

 レツト君の継続面接に次いで、お母さん面接がスタート。スクールカウンセラーのユウキ先生は、アドラー心理学を改めて復習。するとアドラーも、ライフスタイルを探るのに、その人の認知の特性を見ることが分かった。

  参考までに

6.心理検査

 2回目の面接時、お母さんは、三年生の頃教育センターで受けた検査の結果を持参してくれた。それは、知能検査であり、結果については、同じ年齢の子たちの”平均の少し下”程度であり、様子をみましょうとのことであったという。

説明

 心理検査の細かい結果は、目で見て組み立てたり頭の中でイメージを構築する力が強いが、聞いてすぐに憶えることや、決められた時間やルールに従って素早く作業をすることが苦手、というものだった。​学業の習得に関しては、習得する知識にムラがあり、興味のあるものについては詳しいが、同等の難易度でも、興味がないものについては、習得しづらいとのことであった。総じて、個人の中でのできること、できないこと、の差が大きいこと、また、できることであっても時と場合によっては難しくなるというまとめであった。

 お母さんは、教育センターの検査担当臨床心理士の検査の結果の説明や担当相談員の口ぶりから、うちの子は“発達障害”ではないかと心配し、インターネットで特徴を検索、お母さんなりに勉強し、発達障害の子どもに対する親の接し方等を実践しようとしている。例えば、各教科のボックスを作り、教科書やノートはその中に入れるようにした。また、次の日の時間割を大きく印刷して見やすくしたり…。「”構造化”っていうんですか?」と言っていた。

 ユウキ先生は、お母さんのその努力に感銘し、素直に、「そこまでされて、驚きです」と気持ちを伝えた。実際、最近インターネットなどで、”発達障害”と検索すると様々な知見や支援のノーハウが出てくるが、読んでも実践される親御さんはあまりいなかった。

 でも、どこかで正直な疑問として、「このお母さんは、”課題の分離”ができていないかもしれない…」と思った。アドラーの言葉を借りるのであれば、このお母さんは、レツト君の課題に土足で踏み込んでいる…。レツト君自身が向き合い、解決に臨むかどうかを決めるはずの課題に踏み込み過ぎている、そう感じた。しかし、いずれユウキ先生自身が同じ轍を踏むことになろうとは、この時はまだ思いもしなかった。

 しかし、こういった心理検査の結果についてアドラーだったらどうのように考えるのだろうか。ユウキ先生は、正直に、そう思った。この結果は、外から見て、人を、ある決まった枠組に当てはめる代表のようなものである。
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