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長男が私にくれた時間



📕
「もしもし」と大人びた声の2歳児は   実に軽やかセールスかわす

21世紀になろうとしていた頃、 私は海からの微かな汽笛が聞こえてくるとても古い社宅で、子育てを始めていた。

あれから24年、今エンディングノートを書き進めている中、自分の子育てのことも一旦来た道を辿ってみてもいいかも、と思い立った。

別段ドラマティックでもない平凡な長男との日常を、過去と現在を行き来しながらコソコソっと書き残してみようと思う。


・出逢った頃の長男


長男は生まれてからの1年、お世辞にも育てやすい子供とは言えなかった。

ちっとも寝ない、全然食べない、大きくならない、ビニールが擦れる僅かな音で泣く、ベビーカーにもチャイルドシートにも大人しく乗ってくれたことはただの一度もない。

隣のベビーカーの赤ちゃんは気持ちよさそうにスヤスヤお休みになってるのを見る度に、「どうすりゃいいのさ」 と涙目になったし、「育児書通りになんていかないのね」 と、やさぐれたくもなった。


当時の育児日記には、長男が眠っていた時間、食べたものの量などを記録し、細かい成長の変化を残していた。
でもそれは、テンションが下がるネタばかりが、力ない文字でただ連なる記録だった。


そんな私が、何か違った形で育児記録を残そうと心あらたに始めたのが、「子育て短歌」 だった。

目線を変えて、風景と共に状況をみるようにすると、前を急がなくなった。


🕶️  昨日より一段高い空が 「ほら!」  あなたに見せたい初めての夏

🌤️  空色にぽくぽく白い鱗雲  あなたが見てるあなたを見てる


短歌を書く事で、救われた時間があった。

文頭の短歌は、多分電話セールスに出た2歳の長男が、何かうまいこと言って、勝手に電話を切っちゃった時にうまれた歌だったと思う。

正確には記憶していないが、情景だけは写真のように思い出す。


そして月日は流れ、長男は営業の仕事をし始めた(´▽︎`*)




・出戻り長男との緩い時間


営業職の彼は平日お休みのことが多く、同じく平日休みが多い私。

休みの日ランチどきに家の中で顔を合わせると、どちらかともなく「何か食べる?」 と、一緒に昼ごはんを食べることが増えた。

大学の4年間は離れて暮らしていたが、就職が地元になり、勤務地が家から十数分という場所になってしまったので、長男はウチに舞い戻ってきた。

戻ってきた当初は、一度巣立ったと思ったのに戻ってくるんか〰️い😒 と、私は今後どう彼と関わっていくか少し迷っていた。

(私は気が緩むと、とかく構いすぎるタイプの母親な気がするので、毎日姿を見てしまうといらぬ心配をしそうで、そこも気がかりだった)


・コロナ禍の大学生活


長男の大学時代はコロナ禍真っ只中で、かなりの期間、自宅待機状態だった。
やりたかったサークルも全面禁止になり、大学生の醍醐味である旅にすら出かけられなかった。

そこで彼は、下宿先のアパートで出来ること、ならば読書だと、一時期何やら夢中で小説を読んでいて、Instagramには偉そうに書評などを載せていた。

そして、暫くすると彼は自分で小説を書き始めた。



彼が少しお話が出来るようになった頃、私達家族の憩いの場所は近所の図書館だった。
彼の読書の原点は、その時代にあると思う。

おひとり様十冊、絵本が借りられる。
私の分も合わせると二十冊。
二週に一度それを持ち帰る。


しかし、読み聞かせ、これ、結構疲れるのだ。

体力の限界に近づく夜の絵本の読み聞かせは、三冊までにして欲しいとお願いをして、あとは電気を消して暗闇の中、毎晩私と長男による作り話タイムが繰り広げられた。

一行私がお話を作る。
その後、長男が続きの一行を作る。
10ターン位繰り返すと、どちらかが寝てしまう。

二人の作り話はどこかで聞いたような話が多かったが、何気に面白くて、たまに「そう来たか?」なんてこともあった。



大学生になった長男が書いた小説は、短編小説から長編小説まで、私が知っているだけで四作品あった。
(本当にすることがなかったんだろうな、と少し切なくなる。)


内容は、とんでもない話もあったが、読むのが止められなくなる話もあって、小さな文学賞の途中選考まで残ったりするものもあった。
コロナ禍だから生まれたような作品もあった。



・息子なのだけど、ちょっと面白い人


彼の話はいつもちょっと面白い。
ここ暫くでお腹がよれるほど笑ったのは、どれも彼の話だ。

今でも小説を書いていた時の習慣なのか、日々の気づきをネタ帳のようにスマホにメモっていたりする。

ネタの拾い方も興味深い。

先日も
「大人」と「子供」の違いについてという話になって、

【理由もなく走れるのが子供だと思う】

と長男は言い始めた。

急いでる、スポーツをしている、逃げている、それ以外で確かに大人は走らないか。

子供は理由もなくよく走る。
うん、確かに。

「大人になったなぁ」と思った瞬間は、友達との挨拶が「おつかれさま」になった時だったらしい(笑)
「成年と未成年、と違って大人と子供って境界が曖昧だからさ」

うんうん、そこ掘り下げると面白そう。


こんなどうでもいい話をしながら、ゆるっとお昼ご飯を食べる。

よく共有するネタは、流行りのドラマや映画やリアリティショーの考察。

これがまた物事の俯瞰力なのか、唸らせるものも多い。

面白いと思うものも少し似ているのかもしれない。



最高のお喋り相手に育った(´▽`)ノ



・長男との過去と現在と未来

私は、一歳までの長男にはほとほと疲れていたので、本気で「スイッチはどこだ??」と彼のおしりの辺りを探したりする位の精神状態だったこともあった。

育児経験のある方だと多かれ少なかれあるよね?

近所に心許せる友人が一人もいなかった子育て一年目は、少ししんどいな、と感じることも多かった。

一日たりとニ時間以上続けて寝られない日が、十ヶ月も続けば、人は変にもなってしまう。


しかし、あの時、幻のスイッチを見つけなくて良かった。
お陰で一家の中で一番大きく育った。


また数年したら、長男も二度目の巣立ちでこの家を出るだろう。

今の彼との時間は、ほんのひとときではあると思うが、私にとって楽しい話し相手として、よいガス抜きになってくれている。

彼も今、厳しい海原でアップアップしているご様子で、「人がいる家に帰れることを有難いと思うなんて、思ってもみなかった」と言うくらい、始まったばかりの社会人生活は大変なよう。

人生大変な時期は、家族は少々甘えてもいいかな。

いい歳して甘くない?
うん、ちょっとそう思う。


でももう暫く、休みの日「なんか食べる?」と言えるのを楽しもうかな。



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2024.2.26 投稿

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