【雑感】2019年J2リーグ 第11節 対ファジアーノ岡山 ~完成しつつある設計図~

ファジアーノ岡山 1-1 東京ヴェルディ

平成最後の試合を勝って締めくくるべく勢いある攻撃を見せたヴェルディだった。残念ながら引き分けになったが、新時代を迎える5月からの反撃に期待を膨らませる内容を振り返りたい。

<スタメン>

 ヴェルディは主将近藤が怪我持ちということもありこの日はベンチ外、代役には久しぶりにヨンジがCB起用される。前節・新潟戦で移籍後初ゴールを挙げた端戸が先発復帰、梶川に代わって藤本寛也も第2節愛媛戦以来の先発起用で右サイドに入り小池が左サイドになる。システムは変わらずに3ボランチを採用する。前節・徳島戦で逆転勝ちした岡山はここまで6得点のイヨンジェ、4得点の仲間が攻撃を牽引する1-4-4-2で臨む。

<ボールを前進させる複数パターン>

 試合序盤から主導権を握ったのはここ4試合未勝利のヴェルディだった。ボールを丁寧に扱う志向にあり、最終ラインでの基本的なビルドアップはヨンジと平の2CB+井上潮音の3枚が中心だった。岡山は2トップのプレッシングのみで中盤はリトリート気味ということが多かったため、数的優位が自然に生まれてボールを握る展開となる。中盤が積極的に上下動しないため2トップ周囲に発生するスペースに佐藤優平も下りて来てビルド場面が見られた。この日は潮音と優平の距離感が近づき過ぎずにほど良い間隔であり、スムーズにボールが回っていた。

11分、ヨンジのパスミスから岡山・仲間にボール奪取されてそのままシュートに持ち込まれる決定機を作られたがそれ以外は前半はほぼヴェルディペースになった。自陣からボールを繋いでいきビルドアップの出口として渡辺皓太以外にも、ハーフラインを超える位置でSB若狭と奈良輪やSH藤本寛也と小池純輝がなることもあった。前者の場合はボールを貰うとターンして持ち前の力強い単独ドリブルでボールを運び一気に相手陣地まで入っていく。後者の場合はパスを受けるために幅を取ることで中央を固める岡山中盤を横に広げる効果もある。岡山の選手たちを間延びさせることで縦パスが一気に通せることやそのスペースをヴェルディの選手が埋めて高い位置で数的優位を作り端戸がタメを作り、他の選手と絡んで小刻みなパス回しをすることで全体を押し上げて、PA付近まで人数をかけた攻撃が出来た。21分寛也のボール奪取からカウンターを仕掛け、優平のクロスに長い距離を走ってきた若狭がボレーシュート、24分には潮音の浮き球を端戸が反転しながらボレーシュートを放つ。38分ヨンジのロングパスを小池がキープして端戸、寛也とゴール前でパスをつなぎ、最後は逆サイドから上がってきた奈良輪の右足シュートが決まりヴェルディが先制した。PA内へSBやDH含めて5選手が入り込みフィニッシュまで持ち込むという昨年までは見られなかった形が実を結んだ。

<修正した岡山への対応> 

 後半立ち上がり、同点に追いつくべく岡山が攻撃の圧を強めてきた。有馬監督のコメントのように、プレッシングがバラバラになっていたためハーフタイムに修正を図り、2トップに中盤の選手も加わり数的同数を作る事でヴェルディの重心を下げてセカンドボール回収からシュートへ持ち込む場面が増えた。守備陣が凌ぎ、前線ではこの日先発起用された端戸と右サイド寛也がボールを収めることが出来る選手なので次第にリズムを取り戻していく。

63分、小池のパスをPA内で受けた寛也のシュートが廣木の手に当たったとジャッジされてPKを得た。勝負を決められる絶好のチャンスだったが、端戸のシュートは一森に防がれてすぐさま皓太がこぼれ球を拾いクロスを入れるが潮音のシュートはバーの上を超えた。PK失敗で会場の雰囲気も一変してしまう。1万人近いサポーターの声援を受ける岡山が再び盛り返してきたタイミングで寛也に替えてレアンドロを投入し、5-3-2の布陣となった。ホワイト監督曰く、『ゲームを締めるため最終ラインに充分な人数を確保しつつ、前の枚数を1から2に増やす。攻撃時にパスを出す味方を前線に用意し、守り過ぎないことを意識させた』とのこと。直後の75分、岡山CK時に上福元が相手選手にプレーを防がれるような形で対応が遅れてイ・ヨンジェにヘディングシュートを叩き込まれ、岡山に追いつかれた。後半早々のCKでも岡山の選手が上福元に対して競り合いが遅れるようなプレーを取っていたため警戒出来たかもしれなかった。

同点になり、勝ち越しゴールを目指す両チームは間延びしてオープンな展開になる。故障明けのレアンドロはさすがのボールさばきを見せるがシュートまでは持って行けなかった。試合終了間際に岡山の怒涛の攻撃を凌いで、内容あるサッカーをしていたが勝ち点2を失う結果となった。

<まとめ>

 終わってみたら4月未勝利となったが、90分を通じて攻撃の波が極端になっていたこれまでの戦いぶりからすると、相手の出方を見て攻撃パターンを使い分けることで終始チャンスを作れていて精度が上がってきたように見えた。SB若狭と奈良輪が高い位置まで攻め上がってきたシュートする場面が前節の新潟戦同様に増えてきたこともイメージがだいぶ共有されてきているのでは考える。それだけに守備面を中心としたゲームコントロールが監督は勿論、選手たちの今後の宿題になってくるだろう。ある程度の失点は覚悟のうえでのサッカーを志向する以上、設計が完成したらあとはフィニッシュの精度だ。