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[エッセイお仕事小説]銀座東洋物語。

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ホテルは幸せな仕事。二十代半ばで転職し続けたどり着いたホテルは働く人も泊まる人も幸せなホテルだった。著者が経験した仕事をエッセンスに、小説風にまとめました。昭和の仕事の仕方はこん…
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2024年5月の記事一覧

銀座東洋物語。10(ドッペルゲンガー)の⑥

銀座東洋物語。10(ドッペルゲンガー)の⑥

 ハウスキーピングマスターの邦康さんは、普段はポーカーフェイスで元ベルマンのチーフだったのが納得できる澄ました顔でゲストに対応する。業界の人や同じビルにある劇場に出演している俳優にホテルのバックヤードを案内している時は、少し様子が違う。声のトーンが上がるのだ。
 邦康さんの訳知りな感じの説明の声がうわずっていたから、振り返るとサービス業界とも芸能関係とも違う色合いの人がいた。その人に鍵交換の話をし

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