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何清漣★露・ウクライナ戦争が西側の「グリーンエネルギー計画」を押し流す2022年7月7日


 露・ウクライナ戦争によって真っ先に倒されるのはロシア経済でも、砲火を浴びるウクライナでもありません。西側国家がこれまで何としても実現しようとしてきたグリーンエネルギー計画です。

6月15日、ロシアは「技術的問題」によってノルドストリームパイプラインの天然ガス輸出を最大60%削減すると発表しました。これは欧州諸国に致命的な打撃となります。

ロンドンのインターコンチネンタル取引所(ICE)によると、ガス価格は6月15日に1,000立方メートルあたり1,100ドルを超えて始まり、終値は1,000立方メートルあたり1,153ドルと、8%近く上昇しました。

ドイツ、イタリアなどはすでに未充填のガス備蓄の放出を余儀なくされており、今回のロシアの供給抑制で欧州は間違いなく悪循環に陥り、有効な解決策が見つからなければ、エネルギー不足で今年の冬が非常に厳しいものになるでしょう。

★ドイツ政界は理想主義と現実の苦境の間に

他の小国の選択はともかく、ドイツはEUの経済を支える大国で、その選択はEUにとって大きな関心事です。ドイツ政界は3政党体制(中道左派のSPD、環境政党の緑の党、中道リベラルの自由民主党FDP)ですが、ロシアのガス問題では二つの意見に分かれています。

緑の党は理想主義を変えていません。ドイツ経済・気候保険省は2024年夏までにドイツは完全にロシアの天然ガスと縁を切ると予想しています。

6月10日、同省のハベック大臣兼副首相(緑の党)は、「ドイツはエネルギーの観点から難しい秋と冬を迎えるだろう」、「"... エネルギーを節約する人は、ドイツがロシアの輸入品への依存を減らし、気候に良い影響を与えることになる」とし、エネルギー危機を乗り切るための国民的な省エネキャンペーン「8000万人のエネルギーを変えよう」の開始を発表しました。

しかし、今はまだ2022年で、2024年までまだ2回の冬があり、人間は動物のように冬眠することはできません。ですから、ドイツ政府の現実派は今年の冬をどう過ごすか頭を悩ませています。

現実主義者たちは、カナダやEUと現状を交渉し、カナダにある「ノルドストリーム1」の修理済みタービンの引き渡しを受け(訳注;ロシアの国営ガスプロムが修理が遅れていることを理由にガス供給を4割に削減。これを受けて対ロシア制裁の適用除外として。ウクライナは反発)、稼働させようとしています。

ドイツ政府も「ガスプロム・ゲルマニア社」を国有化せず、同社に対するドイツ送電網庁(BNetzA)の管理期間を延長し、融資も続けて、社名を「欧州エネルギー保障」に変えようとしています。

ドイツの政治家や専門家の多くは、ドイツが短期的にロシアのガスに完全に代わる供給源を見つけることは不可能であり、中期的にもドイツはロシアのガスと絶対に切っても切れない関係にあると考えています。

露紙「イスベスチャ」の取材に対して、欧州議会議員グンナル・ベルクは、「第一に、他の供給国から短期間に十分な量を確保できるかどうか疑問であり、第二に、他の国からの輸入ははるかに高価になる」と述べています。「ノルドストリーム1」は低価格で大量のガスを輸入するための必須のルートなのです。

「ドイツのための選択」(AfD、右派)のヨハン・ノルテ議員も「ノルドストリーム問題が解決されることを希望する」と述べています。

彼は「現在の地下貯蔵庫の充填率が十分であっても、55%では冬場は足りない。 少なくとも90%は必要だ。 ドイツだけでなく、欧米諸国でも、禁輸という非現実的な脅しではなく、すべての紛争当事者との賢明な話し合いによってのみ、目標を達成できることに気づきつつあると思う。 将来的にもドイツにはロシアのガスが必要だ」と言いました。

★東欧諸国「冬までに皆、燃やし尽くしてしまうだろう」

エネルギー不足問題の他に、さらに重大な問題があります。そえrはこの20年間、グリーンエネルギー運動の未来が不確かになったことです。そして、グリーンエネルギー運動の終焉はまさにその推進者たちの「グリーンエネルギー先鋒ドイツ」の終焉を意味します。

2021年、EUはロシアから約1550億立方メートルのガスを輸入しています。このうちドイツは最大のシェアを持ち、工業用ガス需要の約3分の1を占めています。ドイツの強力な製造業を支えているのは、間違いなくロシアのガスなのです。

今年2月末の露・ウクライナ戦争前、ドイツはガスの55%をロシアから輸入していたが、現在このシェアは35%に低下しています。そして、同時にドイツの消費者物価指数(CPI)とPPIは過去最高、インフレ率は1973年冬と同じ7.9%と、50年ぶりの高水準に達しています。今、ドイツ政府は放棄された石炭発電プロジェクトを再稼働せざるを得なくなりました。

地球環境のパイオニアであるドイツが石炭火力発電事業を再開したのを手本に、イタリア、オーストリア、オランダ、デンマークも同様に石炭火力発電事業の再開を発表しています。いずれも石炭エネルギーや環境保護の放棄を訴えてきた先駆的な国々です。

しかし、現実は残酷で、イタリアは約40%を、ドイツは約1/3、フランスは約1/5、オーストリアは約80%をロシアのガスに頼っているのです。

EUが発表した新エネルギー政策では、2022年末までにロシアの石油に依存することをやめ、ロシアの石油の購入を禁止することが発表されています。これらの国はエネルギー供給を確保するために、これまで放棄されていた石炭発電プロジェクトの再稼働を余儀なくされています。

チェコなどの東欧諸国も、「冬にガスが足りなくなったら、燃やせるものは全部燃やす」と言います。

★こっそりと路線転換の「グリーン・ウォッシング」

環境保護活動家たちは理想を持ち続けることは可能です。しかし、理想は豊かで現実は暗く、理想だけでは人々の問題を解決することはできないのです。

グローバルな調査およびコンサルタントグループ「ウッド・マッケンジー」社の欧州ガスアナリスト、グラハム・フリードマンは、欧州の大部分では冬の1日のガス需要は夏の通常の需要の約3倍になり、ドイツは大きく暖房用のガスに依存しているため、6倍になる可能性があるとしています。

ドイツ政府が石炭火力発電所の閉鎖を再開するというニュースは、ドイツの産業界から歓迎される一方で、環境保護団体から疑問の声が上がっています。

EUでは再生エネルギーのルールを大幅に書き換えようという動きがあります。木屑廃材などはたとえ二酸化炭素を排出したとしても「再生可能エネルギー」とみなそうというのです。また一部の原子力発電所と石炭ガス発電所を「再生エネルギー」としようという動きは「エネルギのグリーンウォッシング」だと批判を浴びています。

欧州のグリーンエネルギー計画は、米の木材のおかげでもありました。 5月17日付のニューヨーク・タイムズ紙に掲載された「Europe reconsiders its reliance on wood for power」によると、近年、ヨーロッパの発電所は石炭以外のものを燃やすことによって、石炭の使用量を減らしています。報道では、アメリカ中西部の州の住民がすでにこの森林破壊に対して抗議を始めていることに触れています。

★「ロシアの戦争が気候政策に終止符」

「フォリン・ポリシー」は6月5日、 環境研究組織「ブレイクスルーインスティテュート」創設者のテッド・ノードハウス所長は「ロシアの戦争は気候政策の終焉」と題する記事を掲載しました。

記事は「大変皮肉なことに、地政学的な対立とエネルギー不足は、数十年にわたる熱心な政策よりも気候に影響を与えるだろう」と冒頭に記しています。記事は遠慮なくこう言いきります。
 
 ;冷戦終結後、国際社会の多く、特に国連とその機関にとって、気候変動は単なる環境問題ではなく、冷戦後の秩序をより公平に、多国間で、政治的に統合したものに再構築する機会を提供するものでもあった。
 しかし、京都議定書の規定(炭素取引)が「ハードカレンシー」として国際的に通用するようになるには至っていない。
 露・ウクライナ戦争以降、世界は大きく変化し、欧州がロシアの石油・ガスに大きく依存しているのは氷山の一角に過ぎず、世界の再生可能エネルギー経済は地政学的に問題のあるサプライチェーンと深く関わっているのだ。
  世界のシリコン、リチウム、レアアースの鉱物のほとんどは中国から供給されており、ソーラーパネルの生産は主に新疆ウイグル自治区(強制収容所というデリケートな問題がある)である。
 欧米のエネルギー危機を解決するために、中国製のソーラーパネルやバッテリーに依存するか、ロシアの石油やガスに依存するかを選択するという考えは、環境運動がいかに正義や人権、民主主義に対して、驕りがあったかを示している。

疑いなく、世界情勢はオーストラリア、アメリカ、カナダ、ロシアを含む中東などの資源国に有利に働くでしょう。とりわけオーストラリアは、海外資源への依存度が極めて高い中国との外交において、行動を起こせば、かけがえのない重要な切り札を手にすることができるでしょう。(訳注;この記事は豪州読者相手に書かれている)https://www.sbs.com.au/chinese/mandarin/zh-hans/opinion-western-countries-green-energy-schemes

(終わり)

俄乌战争后果:西方绿能计划悄然“洗绿”
2022年7月7日

俄乌战争延续至今,最先倒下的既不是遭受全面制裁的俄罗斯经济,也不是每天遭受炮火攻击的乌克兰,而是西方国家雄心万丈要不惜一切代价推广的绿色能源计划。6月15日,俄罗斯宣布因技术问题暂停对北溪管道的天然气输送总量,降幅高达60%,这对欧洲国家带来致命的打击。根据伦敦洲际交易所(ICE)的数据, 6月15日天然气价格开盘突破1100美元/千立方米,收盘价为1153美元/千立方米,涨幅接近8%。德国、意大利等国本来就被迫释放了还未注满的天然气储备,如今俄罗斯缩减供应量,无疑让欧洲进入了一个恶性循环,如果再找不到有效的解决办法,缺乏能源的冬天日子非常难熬。

德国政界:理想主义与现实困境的交战

其他小国的选择影响较小,但德国是欧盟的经济支柱,其选择却事关欧盟大局。德国政府本来就是三党组织,如今在俄罗斯天然气问题上分为两派。

绿党仍然不改初衷,坚持环境理想主义。德国经济事务和气候保护部(BMWK)预测,到2024年夏天德国将完全放弃俄罗斯天然气。6月10日,该部部长兼副总理哈贝克(绿党)说:“从能源角度看,德国将度过一个困难的秋天和冬天”, “节约能源的人将帮助德国减少对俄罗斯进口的依赖,并为气候做好事”,宣布启动“8000万人共同改变能源”的全国节能运动,帮助国家度过能源危机。

但如今还是2022年,到2024年还有两个冬天,人不能如动物般冬眠。因此,德国政府中的现实主义者主要考虑今年冬天如何过。

德国政府当中的现实主义者正与加拿大和欧盟就当前局势进行谈判,试图将被困在加拿大的涡轮机送回,使“北溪-1”管道继续运行。德国政府也未将俄气德国公司(Gazprom Germania GmbH)国有化,并决定延长德国电网署(BNetzA)对该公司的托管,为该公司提供贷款,并将其更名为“为欧洲保障能源”。

不少德国政治家和专家认为,德国不大可能在短期内找到完全替代俄罗斯天然气的供应商,即使从中期看德国也绝对离不开俄罗斯天然气。在接受《消息报》的采访时,欧洲议会议员古纳尔·别克说:“首先,能否在短时间内从其他供应商那里获得足够数量令人怀疑;其次,从其他国家进口将会贵很多。因此,‘北溪’是低价进口大量天然气的必需渠道。” 德国选择党联邦议员贾恩·诺尔特则称,希望围绕“北溪”的问题能得以解决。他说:“就算现在地下储气库注气率足够,55%也不足以过冬。我们需要至少90%。我认为,不仅德国,包括其他西方国家的人们逐渐意识到,能达到目标的,不是某些不现实的禁运威胁,而只能是与冲突各方理智讨论。即使将来德国也需要俄罗斯天然气。”

东欧国家:“到冬天,我们什么都烧”

除了能源短缺之外,还有个更重大的问题,就是欧盟发起近20年的绿能运动命运陷入未定之天,而且终结绿能运动生命的就是绿能运动的催生者:绿能先锋德国。

2021年,欧盟从俄罗斯进口约1550亿立方米天然气,其中德国是欧盟天然气消费份额最大的国家,工业用气占德国天然气需求的三分之一左右。可以说,是俄罗斯天然气支撑了德国强大的制造业。今年2月下旬俄乌战争发生之前,德国55%的天然气从俄罗斯进口,如今这一份额已降至35%,与此同时,德国居民消费者物价指数(CPI)、PPI屡创新高,通货膨胀亦创50年来新高,达7.9%,上次出现类似通胀率是1973年冬季。德国政府不得不重新启动原已废弃的煤电项目。

德国是倡导全球环保的先锋国家,它重新启用煤电项目起了示范作用,意大利、奥地利、荷兰、丹麦都纷纷跟进,宣布类似重启煤电项目的计划——它们也都是曾经呼吁放弃煤炭能源和倡导环保的先锋国家。但现实很残酷:意大利约有40%的天然气需求量由俄国供应;德国约1/3;法国约1/5天然气;而奥地利来自俄国的天然气供应占其所需量约80%。

欧盟公布的新能源政策宣布停止依赖俄罗斯的石油,在2022年底前禁止购买俄罗斯的石油,迫使这些国家不得不重新启用原已经废弃的煤电项目,以保障能源供应。捷克等东欧国家也纷纷表态,冬天没气可用,我们将焚烧一切可取暖的东西。

洗绿”活动(greenwashing)悄然开始

环保界可以继续坚持理想,但理想很丰满,现实很骨感,执政者仅有理想无法解决民生。伍德麦肯兹(Wood Mackenzie)欧洲天然气分析师格雷厄姆•弗里德曼(Graham Freedman)说,对于欧洲大部分地区来说,冬季天然气日需求量往往是夏季通常需求量的三倍左右,但德国庞大的国内市场以及对天然气供暖的严重依赖可能意味着更大幅度的波动,在寒冷季节的需求会增长六倍。德国政府将重启封存燃煤电厂的消息传出后,受到德国工业界欢迎,但同时也遭到环保界质疑。

欧盟一项新提案将大幅改写欧盟关于可再生能源的规则,这项提案的内容是,将一些作为燃料燃烧的有机材料(如木屑颗粒)视为可再生能源——即使它们会释放碳排放。争议:欧盟将一些核电 和天然气工厂标记为可持续投资。批评者说这是“洗绿”。

欧洲能够实施绿色能源计划,还得益于美国的木材。据《纽约时报》在今年5月17日发表的《欧洲重新考虑其对燃木发电的依赖》,近年来,欧洲的发电厂通过燃烧其他东西来减少对煤炭的使用:数百万吨木材,其中大部分是从美国进口的。《纽约时报》在2021年一篇报道中提到,美国中西部州居民早已经开始抗议这种砍伐。

美《外交政策》:俄罗斯战争终结了气候政策

美国《外交政策》于6月5日刊发了一篇文章《如我们所知,俄罗斯的战争是气候政策的终结》,作者是the Breakthrough Institute执行董事泰德·诺德豪斯(Ted Nordhaus)。

文章开头就点出:“具有讽刺意味的是,地缘政治冲突和能源短缺对气候的影响将超过数十年的热心政策。”这篇文章毫不隐讳地指出:冷战结束以后,对于大部分国际社会,特别是联合国及其机构而言,气候变化也不仅仅是一个环境问题,它为重塑冷战后的秩序提供了机会,使其更加公平、多边和政治一体化。但《京都协议书》规定的相关规定(碳排放权交易)始终没有能够成为国际通行的“硬通货”。自俄乌战争以来世界发生了深刻的变化,欧洲对俄罗斯石油和天然气的严重依赖只是冰山一角,世界可再生能源经济与存在地缘政治问题的供应链深深纠缠在一起。世界上大部分硅、锂和稀土矿物的供应依赖中国,那里的太阳能电池板生产主要在新疆地区(有个敏感的集中营问题)。作者的结论是:在依赖中国太阳能电池板和电池与依赖俄罗斯石油和天然气之间做一选择以解决西方能源危机的想法表明,环境运动对正义、人权和民主的自负是多么不严肃。

毫无疑问,世界局势将变得对资源国家,比如澳大利亚、美国、加拿大、中东包括俄罗斯等国有利。特别是澳大利亚,面对资源对外依赖极强的中国,如果掌握的分寸恰当,在与中国的外交将拥有一张无可替代的重要筹码。

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