エビデンスを求めて三千里、着太郎(@192study)です。
5歳~11歳向けファイザー製ワクチン接種が1月21日に承認され、3月1日に自治体から5歳~11歳向けワクチン接種の接種券を発送したとの連絡が来ました。判断に逡巡しないように関連データを調べることにしました。
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個人的な要約
データから読み解くのが面倒な方向けの、個人的な理解・解釈を元にした要約です。できるだけ自分でデータを確認して判断してください。
ワクチンの有効性
ワクチンの副反応と有害事象
ワクチンの有効性
アメリカ疾病予防管理センター(CDC) MMWR (2022-03-11)
5~11歳の2回接種児において、2回目接種後14~82日のあらゆる症状および無症状のオミクロン感染に対するワクチンの有効性は、社会人口学的特性、健康情報、社会接触回数、マスクの使用、場所、地域のウイルスの流行を調整すると31% (95% CI = 9%~48%) であった。
ワクチン接種者186名 (5~11歳の小児174名[93%]、12~15歳の青年13名[7%]) のうち、37.6%が無症状であった。
症状を報告した者は1.4日寝込んでおり、ワクチン接種者の傾向で調整した後、非接種者の報告 (95%CI = -1.1~-0.1) を0.6日少なくしていた。
逆に、ワクチン接種者は学校を26.2時間欠席しており、ワクチン未接種の参加者の報告よりも調整後の平均で11時間多かった (95%CI=4.6~17.6)。
全体として、医療機関への受診はワクチン未接種者の16.4%とワクチン接種者の15.5%で報告されており、有意差はなかった。
アメリカ疾病予防管理センター(CDC) MMWR (2022-03-01)
5〜11歳のワクチン2回接種後14〜67日経過の救急外来受診予防のワクチン有効性は51%、入院予防効果は74%。
他の世代も同様だがオミクロン株ではデルタ株の半分程度の有効性になるようだ。
なお、51%は発症予防率ではなく外来受診予防率であり、また他の年代の14-149日経過のデータと比べ期間が短く信頼区間(CI)も幅が広い。
また、入院予防率の74%もサンプル数が少なく、信頼区間の幅がマイナス値に及んでいて広すぎるため、今後のアップデートが望まれる。
イスラエル (2022-02-02)
グラフを目視で単純計算すると5〜11歳における2回接種後1〜2ヶ月経過時のワクチンの有効率は46%程度で、前述のCDCのデータに近い。入院予防効果の記載はない。
ニューヨーク州保健局 MedRxiv (2022-02-28)
ワクチンの有効性が1ヶ月で12%まで下がったとした査読前論文(プレプリント)。交絡因子の考慮がなく、他の年代と比べて有効性が落ちる速度が早いかもしれない、という意味で参考程度と受け取った方がよさそう。
Figure 2 の注釈で「後の時点で観察された負のVE値(ワクチンの有効性)は、ワクチン接種者の真の相対的なリスク増加とは異なり、推定量の不安定さおよび/または残留交絡を反映していると考えられる。」と記載があり、VEが35日以降で-10%/-41%となっているのは実際に感染しやすくなっていることを示している訳ではないと自ら指摘している。
救急医Taka (@mph_for_doctors) さんのこちらのスレッドの解説が参考になる。
副反応・有害事象
ワクチンの副反応はいずれも他の若年世代と比較して最も低く、他の世代と同様に2回目の方が相対的に多い。5〜11歳で特異的に高い有害事象および副反応はない模様。
アメリカ疾病予防管理センター(CDC) MMWR (2021-12-31)
テキストメッセージとWeb調査により接種後有害事象を報告する v-safe℠ に報告された総数とその内訳。
ただし、当該期間の対象者のワクチン接種の総数は870万回。あくまで有害事象(ワクチンが原因の副反応かは定かでない)の自主的な(何もなければわざわざ報告しない)報告における比率に過ぎないので、あくまで参考程度に受け取った方がよさそう。自主的な有害事象報告数を母数として見当違いな人数を計算している場合があるので要注意。
ファイザー社 (2021-11-02) / NEJM (2021-11-09)
心筋炎
心筋炎の発症リスクは、1回目では報告されず、2回目で12-15歳および16-17歳と比べて男児で6.1〜9.4%(10分の1)、元々低い女児で28.6%〜52.6%(2分の1)と極めて低い。
感染リスク
インフルエンザとの比較
コロナ禍以前のインフルエンザの入院率と比較して「インフルエンザよりリスクが低い」と誤ったリスク評価がなされることがあるが、あくまで感染対策が行われていない状況の数値に過ぎない。
コロナ禍では社会的に感染対策が徹底された結果、インフルエンザ感染症での入院報告数は激減している。
なお、新型コロナウイルスによる入院数は、「データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報-」の「入院治療等を要する者等推移」のオープンデータによると、2021/2/24-2022/3/1 の期間における「入院治療等を要する者」の10歳未満の人数が28人(男17人、女11人)、10代は11人(男8人、女3人)となっている。
デルタ株以降、20歳未満での入院数が増加している。
学会声明
日本小児科学会
日本感染症学会
添付文書等
独立行政法人医薬品医療機器総合機構 コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)