ムギとイネの起源を考える

千葉保「ムギとイネの起源を考える」『歴史地理教育』945、pp.16-21、2022年。

目次
1 植物はどこから
2 ムギの起源を考える
3 イネの起源を考える

要旨
 「いまの中学生は、学校の授業だけではなく、授業などでの学習で、いわば学び漬けにある状況です」という一文から本稿ははじまる。塾や学校はテストの点数を上げることを至上命題としており、生徒はそのような「学びの新鮮さ」のない学習に飽き飽きしている。このような現状にある生徒の心を、教員はどのように切り開けばよいか。千葉は「授業ではまったく違う世界を彼らに提示し、学びの本質に気づいてほしい」と願ってきたと述べる。
 オリジナルの授業づくりには、教員のアンテナが大切であると千葉は述べる。教員の感性に響くテーマや話題を発見し、その本質に迫り、真実に触れて感動する。するとその内容を子どもたちと共有したくなる、このことが授業づくりの原動力であったと述べている。
 本稿では以上のような千葉の思いをのせた「ムギとイネの起源」の授業について、生徒の対話という形で述べている。授業者の役割は極めて限定的で、授業者は問いを投げかけて、生徒が自らそのことについて調べるという形式をとっている。本稿の最後に、千葉は「授業が弾む仕掛けを教員が意識すると、教科書のみの授業から脱皮していきます。これが生徒の知識欲を刺激し生き生きとした授業になっていく極意だと思います。」と述べている。

補足
 千葉先生は、大学の教職の授業でお世話になりました。大人数が受講する授業だったので、私は後ろの方から「なんか面白いことを考えるおじさんだなー」くらいのことしか思っていませんでした(仲間うちでは、千葉保先生を「チバホ」って呼んでいました)。千葉先生のすごさを実感したのは、教員になってからです。暦教協に参加するようになって再びお名前を伺うようになって、お!この人知ってる!となってご講演を伺いにいったことを記憶しています(会場は武蔵大学だったような気がします)。今回の論稿でも述べられていることですが、生徒が中心になって授業を進めていく、授業者は必要以上の介入をしない。生徒に授業者が巻き込まれて授業が進んでいくところに、魅力を感じています。私自身の授業観を方向付けてくださった先生のひとりであると感じています。

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