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ペットの本を去勢した話

昨今動物園などで話題になっている図書を私も飼っている 犬や猫と違って噛んだり物を壊したりしないのが大変快適だし、調教次第で喋ることもあるが決して飼い易いわけではない 捨てられて啼いていたのを拾った時は激しく震えていて、図書医に診せるまでもう取り返しのつかない状態だと思っていた そんなことはなく幼い本によくある反射だと言われ安堵したときにはもう飼うことを決めていた ブランコと名付けた野良図書は夜はベッドの周りを走り回るわ昼はちょっとの隙間から外に飛び出すわ落ち着きがない トイレもなかなか覚えずたまに私のベッドの中でしていた 投げ出さずに今日まで飼ってこれたのが奇蹟だ ブランコは本当にかわいい

本の繁殖形態

本がどうやって子どもを作るのか、犬や猫と同じように考えている飼い主はそれで痛い目を見るという 私自身最近になって予防注射のため図書医に会うまで知らなかった 本の飼育に関心のない人たちは尚更だろう 野生の本は乾燥地帯に生息している 繁殖期に入った本のオスはページをパラパラと開閉しメスを誘う 首尾よく番が成立すると彼らは地面に穴を掘り、簡単な巣を作って交尾を始める 巣は湿潤でも問題ない 互いのページを一枚一枚重ねていき、やがて摩擦が働いて左右から引っ張られても離れなくなる この状態でメスが生殖器から糸を吐き出し、繭をつくる 繭の中でオスの身体が分解され、その生殖器がメスの酵素の働きで2体か4体の小さな個体に再構成される メスも生殖器を失うが稀に再生する場合もある そしてこのとき特定の温度や湿度の環境下だと大量の子どもができてしまう ヒトの飼育下で起こりやすく、ギネスブックには一度に16匹の子どもが産まれたケースが載っている このために管理しきれなくなって捨てたりする飼い主が急増し、餌の野生動物、日本で言うと熊や蛇が激減している 図書の野生個体は年々増加し、環境省の推計によると2022年には今の5倍、70万体にのぼるという 本のかわいさに隠れがちで、まだ大きく取り沙汰されてはいないが、重大な問題だ 散々悩んだ末私はブランコを去勢した ブランコはオスで、交尾したら死んでしまう これは飼い主のエゴだろうか

去勢処置

先月の定期検診と同様にブランコを図書病院に連れて行った まだ繁殖のできる年齢ではないが、怖くないよとぽつりと言われ、なんとなくブランコもこれから起こることを理解しているのかと思わされる その生の一部を奪ってしまうことに罪悪感を感じながら図書医に引き渡し、施術室の外で待つ 数十分で終わり、ブランコが施術室を飛び出してくる 特に変わった様子もなく、初めて会ったときのように震えてみせる様子に安心した 図書医に礼を言い図書病院を出る 現実感は無かったがこれでブランコが自らの命を捨てて交尾することはなくなった それが良いことが悪いことなのか、つまらない人間は終わってからも尚考えてしまう そんな私にブランコは呑気におなかすいたなどと言う いつも通り、その愛らしさに救われた

術後

ブランコは以前はよくふざけてページをパラパラとやっていたのだが、術後すぐにそれをしなくなった 少しひっかかる感触があるということで図書医に訊いてみたが、それは水分が不足すると一時的に出る症状だという 水を多めに与えてみたが何日経っても治らない 困って図書飼育仲間達に相談すると、前同じ症状で困らされていたという人が助言をくれた 寄生虫がついていたようで、市販の駆除薬で完治できた 持つべきものは先輩である

まだまだ国内では本は犬ほどメジャーではない 生態も謎が多い そのため飼育している人たちが助け合う必要がある 喋るぶんひょっとすると他のペットより気苦労は多いかもしれない 私も本を飼い始めた頃は不安でいっぱいだった それでも私にとってブランコはかけがえのないパートナーであり、これからもずっと一緒に人生を歩んでいけると確信している 本は最高だ 皆さんも本の飼育、検討されてはいかがだろうか

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