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僕の建築新人戦との付き合い方?(ベーシック)


8月上旬、前期の学期末テストそして、設計課題が終わったころだと思う。

前期の忙しさから解放され、真夏のビーチ、サークルの合宿、海外旅行、考え得る愉快で快活なイベントを想像する。僕はきっと頬の重力が溶け出したようなだらしない顔をしていたに違いない。

とりあえず今はゆったりとした時間を過ごそうと思ったその背後から、ねっとりとした鈍い視線。ニチャ


振り向いたそこには、じっとこちらを見つめて僕の動きを捉えて離さない何かが。

そう、その子が「建築新人戦」である。

僕らの貴重な夏休みを一瞬にして消し去る“悪魔”とでも言ってしまおうか。

それは少しばかり言い過ぎかもしれない。


そんな彼女の視線を無視して縦横無尽に夏休みを謳歌してしまう方が、健康的で健全な大学生活を送れるだろうなと内心思いながらも、僕はその子と夏休みを一緒に過ごそうと心の中で決意せざるを得なかったのだ。そう、せざるを得なかったのだ


彼女と会うのは実は初めてではない。とは言っても大学二年生に一度会ったきりであったし、僕は休学をしていた為、実質彼女と会うのは2年ぶりということになる。

それなのに、こうして貴重な大学三年の夏を彼女と過ごすことに決めたのには訳がある。

僕は知っている。尊敬する大学の先輩達や同期たちがこの時期になると、その子にどっぷり沼にはまってしまうことを。


そうしてここにまた一人、底なし沼に足を踏み入れようとしている奴がいる。僕も内心バカだなぁと思いながらも、やはりつい足を入れてしまったのだ。


僕は知っている。先輩方が苦しみながらもその子との関係を楽しんでいた姿を。

僕は知っている。その子から何か不思議な力を得て帰ってくる人達が一定数いるということを。


僕はその先輩たちに救われ、今まで生きてこれた。実際になんども救ってもらった。

そんな彼らの背中を追うことは必然で、彼女から発せられる水平的な重力からどうしても逃れられことは出来なかったのだ。

こうして僕の夏休みは、真夏の日差しにさらされるアイスキャンディーのように溶けていった。

こんなことになったのは誰のせいなのか。

責任者に問いただしたい。責任者はどこか。


そんなこんなで「建築新人戦」(以後、新人戦と略す)を出すわけにしたのである。





前置きはこれくらいにして簡単にまずは新人戦について簡単に説明する。

何を偉そうに新人戦を語りやがって、お前は誰なんだ名前を名乗れと憤りを感じている皆さんの為にも、少しばかり自己紹介をさせてもらう。

私は2022年8月現在、近畿大学建築学部四年の中野宏道です。

Twitterでは”みっちーとして活動している。今は卒制やコンペや団体運営をとおして建築と社会の関係について考えています。

      ↑興味あるひとフォローしてくれたらウレシイ


Twitterは去年の新人戦の二次審査の前あたりから始めました、それにも一応理由がありますがそれはまたの機会に話します。



僕は去年の新人戦2021で優秀新人賞をありがたいことに貰いました。票を入れてくださった、藤野先生と山田先生には頭が上がらない。

入賞できたのは、運と努力の結果だと思います。
けど僕が思うのは、努力というものは物事の結果における”運の要素・割合”を減らすことだと思っています。つまり、運に頼っているうちは努力が足りないということです。それが現実であり可能性だと思っています。


まずは建築新人戦の簡単な紹介

建築新人戦とは


HP引用

建築新人戦は、所属する教育機関(大学・短期大学・専門学校・高等専門学校)で取り組んだ設計課題作品を対象に実施するコンテストです。

一次審査を突破した100作品は、世界に誇る名建築《梅田スカイビル(設計:原広司)》にて展示され、二次審査・公開審査会において最優秀新人を決定します。大学の枠を超えて多様な建築の議論の場として、また活躍の期待されるゴールデンルーキー発掘の場であることも、建築家教育の新たな可能性をひらくものです。全国の学生と設計課題作品を介した濃密な交流を通じて、自らの構想や技量そして自身の所属する教育環境を問い直す場でもあります。


新人戦はただのコンペ・作品展というだけではなく、全国から同世代の建築学生が集まるという貴重なイベントであるということ。つまり、未来の同僚・ライバル・パートナーなどなどがぞろぞろと集まって来る、 そんなの楽しいこと間違いないやん。


特にどういう子に出してほしいのかというと、大学の中ではいい成績を貰えるから腕試しをしてみたい、もしくは逆に大学では評価されないけど頑張っているし挑戦してみたいという熱い子。僕は圧倒的後者であった。

まあ、腕試し程度でもいいのかもしれない案外出すこと自体にもすごく意味のある事でもあるし!


どちらにせよ、出す出さない関係なく現地で展示を必ず見るべきだ。

分かるのはいかに自分が”井の中の蛙”状態であったこと、自分以外にもっと全国にすげぇ奴が沢山いることを思い知らされることになる。


余談だが、最優秀の葛谷くんと8選の小林さんは以前から新人戦に向けてエスキス会をして新人戦頑張ろうなって言い合う仲だったので、個人的にはそういう刺激が貰える仲間がいるというのは頼もしいなぁと実感した。

新人戦後に出展者や友人とごはん行って建築トークではしゃいだのがめちゃたのしくてその後もエスキス会や読書会とか定期的にできる仲間が出来るようなめちゃいい機会だったなと思ってます。

是非応募して今まで見たことない同期たちの作品や思考に触れて建築沼にはまっちゃってください!


新人戦の2022年のスケジュールはこんな感じで大体例年と同じ、

夏休みが始まると同時に一次の提出はもう半月後まで迫っているのである。

そして、一次審査の結果がでてから二次審査までに約1か月くらいは時間がある。いい意味で言えば、すごく時間が与えられている、悪い意味で言えば夏休み全部おわっちゃうよーんって感じ。


01 応募登録 

2022年6月1日(水)~2022年8月13日(土)

02 一次審査

応募作品の中から、100作品を選出 2022年8月19日(金)
作品郵送受付 2022年8月16日(火)・8月17日(水) (必着)

03 二次審査・公開審査(決勝)・表彰式

一次審査で選出された100作品の中から二次審査により8作品を選出し、その8作品の公開審査及びプレゼンテーションおよび表彰式を行う

会期:2022年9月18日(日)
会場:梅田スカイビル タワーウエスト3階 ステラホール



これから、新人戦において僕が考えていたことを話すのだけれど、大前提としてこれは僕の経験談による持論でしかないので、鵜呑みにしすぎないで、参考程度に留めていてくださいね!

目次 全4章

[ベーシック]

・僕が考えたこと(前準備)←今回

[ハードモード]

・100選は100選じゃない(一次審査編)

・16選・8選の差って?(二次審査編)

・優秀賞はまぐれ?(最終審査編)



僕が考えたこと


前提として、共有しておきたいことが3つあります。

個人的な考えなので強要する訳ではありませんが、読み進めていくうえで僕とって大事な要点なので一応話させてもらいます。


一つ目は、僕が設計課題を取り組むうえでのスタンス

僕は建築を学ぶことを通して、自分の考えや思考が広がっていけばいいなと常に思っています。つまり、建築というフィルターを通してこの世界について考えたいということです。

二つ目は、作品を作ることと作品を伝えるということについて

作品を作ればそれが伝わるわけではないということ、“作る”と“伝える”についてしっかり考えたいということ。

三つ目が、色んな視点を持つことについて

現代社会、多くの情報が手に入るようになった同時にその情報を精査する必要がある。僕らが与えられている状況・常識は表面上の物事しか認識できていない、僕はその背後にある何かについて考えたい。


この様な考えで建築を学んでいます、普通のことを言ってんなとは皆は思うかもしれませんが僕にとってはすごく大事なことなんですよね。


まあさっそく新人戦について話していきましょう!



100選に入るには


まずいくつか新人戦における大事な予備知識を共有していきますよー!

応募の流れ

まず、応募フォームから登録→IDを受け取る→一次審査用のA3用紙ファイルを郵送→100選を選出→その中から二次審査で16選を選出→公開審査の対象となる8選へと絞らる→プレゼンを行い順位を決定するという流れです。


順を追って、僕が当時考えていたことを記していきます。


応募登録「IDの狙い目」


作品の印象は前半と後半が残りやすい

これはよくある話だが、文字通りである。IDは応募登録順に振り分けられる、そして作品の展示場所・プレゼン順もそれで決まる、なので自分の作品がどのように一次審査・二次審査で見てもらいたいのかを考えて応募登録をすることも可能である。


▼応募登録


〇一次審査「100に入るために」


100選って行けそうじゃーんって思うかも知れませんが、

昨年度の応募登録数1157人、実際の応募作品数786作品

うんうん、多いよね多すぎるよね、全国にそんなに建築学生居たんだ、、って感じですよね。

100選の基準がなんとなく見えてきたかなと思います。

応募学校数でいうと130校学年一位でも難しいのかもとも思うかも、実際どうなんだろうね、

パンフレッドを買って分析してみるのが一番だと思います!


・どんな作品が100選に選ばれるのかについて


まずここで大事な視点を一つ、

「審査員は神様じゃない、同じ人間である」

僕らが、嫌がることは嫌だし嬉しいことは嬉しいのだと、

つまり、シートの表現は僕らが作ったものをただ見せるのではなく、

どう表現したら相手が気持ちよく読めるのかを考えなければいけない。

しかも、新人戦は一次で10人の先生方で約800作品を審査する必要がある。

想像したら誰が考えてもわかるだろうけど、めちゃめちゃしんどい事、しかも数時間でそれをやる。


審査員に不親切な作品や印象の抱きにくい作品が選ばれる訳がないのが分かると思う。


他人事やなくて自分事として考える。

これ大事。


表現は親切さ

僕の考える、表現は主に下記の三つのことを考えながら決めていく。

一つ目、どれだけ伝えたいことが正確に伝えられるか

二つ目、どれだけオリジナリティをもって差別化出来るか

三つ目、どれだけ親切になれるのか

一つ目は、まず当然だが自分がどういう設計をしてきたのかどういう面白さがあるのかを伝える為に意識する作業。

二つ目が、この提案が今までの作品や他の作品とどのように異なり、新規性があるのかを明確にする為に。最後の三つ目は、作品をもし誰かに見せることが確定しているのならば、持っていなければいけない点である。

三つ目について詳しく話すと、誰かに見せる時に作る、シートや模型やプレゼンはすべて自分が作った物の発表会のような、一方的なものであってはいけない。

詰まるところ、それらの表現は、“ラブレター”のようなものである。

想像してほしい、僕らは設計や作品に対する想いを相手に伝えなければいけない、そんな大事な時に相手の気持ちを考えずに送ったりするだろうか?


ただ、作品を無配慮で送りつける行為は、メールで所属と名前だけ記された”空メール”を送るようなものだ。そんな奴と仲良くなろうなんて思わない、さらには会話をしようとなんて思わない。


僕らは届けなければいけない、伝えなければいけない、この溢れる想いを

その表現から溢れる、メッセージを審査員の方々は汲み取ろうと時間と労力を費やしてくださるのだ。


最大限の誠意をもってシート作るべき

なのではないかと僕は思う。


これからは実践的な話で、先輩や先生方から頂いた助言を元に分析や実践を踏まえ個人的に考えていた新人戦との戦い方とでもいうべきなのか、一種の戦略を書きなぐっています。

続編では100選・16選・8選・優秀賞へと駒を進めていく間でどんなことを現場でしていたのか等を記しています。

ここまで読んでくれてありがとうございます!
新人戦に興味が持てた、出してみたい、何なら入賞したい!と興味を持っていただけた方はぜひ続編も読んでみてくださったら嬉しいです。



続編

建築新人戦との付き合い方(ハードモード)


・100選は100選じゃない(一次審査/100選編)

・16選・8選の差って?(二次審査/16.8選編)

・優秀賞はまぐれ?(最終審査編)


新人戦の通り方?本当にそんな都合のいい話があるだろうか?
ないかもしれないですね、でもそれは読んだ人にしか分からないでしょう、
書かれているのは方法ではなく考え方

▼気になる方はぜひ。


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