見出し画像

言の葉を紡いだ先に

「綺麗だ。」
言葉は綺麗で美しい、と再確認できた一冊。
自分は正しく、美しい言葉をつかうことができているだろうか。

『舟を編む』(三浦しをんさん著)
※齢25歳の感想ですので悪しからず。

自分が最後に紙の辞書を引いたのはいつだっただろうか。
大学生になってからはスマホをもち、パソコンも使用していた。
そうなると最後に使用したのはもう6年程前になる。

兎に角、知らない言葉がたくさん出てくる。
辞書を傍らに置きながら、読み進めたくなる。
(実際には言葉を調べずに読み進めたが。)

日頃、本来の意味で言葉をつかえているだろうか。
今もこの文章を書くにあたり、少し恐れながら書き進めている。
この場合、「恐れている」は正しいのだろうか、など。

登場人物は出版社の中の少数精鋭の編集部のメンバー。
この本で大きな事件はおきない。
人員と予算と会社と闘いながら、辞書を出版するまでのお話。
編集部で働く面々の日常がつらつらの書き綴られている。
1冊の辞書が完成するまでのそれぞれの思いが、
なんともしなやかで美しい言葉と文章で形成されている。

登場人物は、皆人間味のある人ばかりだ。
章ごとに中心人物が変わり、章ごとに時期も変わる。
傍から見たら「変わり者」認定されてしまうような人も、
活動の場が変わったら適任者になれる。
誰かの苦手は自分の得意。
そんな凸凹の編集部メンバーが自分の輝ける場所で
自分の足で立って互いに手を取り合う光景が目に浮かんだ。

個人的には「西岡」が最後まで
舟を編む一員として見えないところで奮闘する姿が頼もしかった。
その場にいないと携われない。
そんなことない。
自分のできるやり方で、自分だからこそできる手法で。
突出した特技がなくても、どんな環境でも適応できるのだって
それも誇るべき力だと。

残り10数ページになったとき、私は泣いていた。
まるで自分が編集部の一員であったかのように。
本っていいな。
改めて思えた本だった。

~あとがき~
今でも初めて使用した辞書は姉からのおさがりのものだった。
調べた言葉には赤鉛筆で線を引く。
そんなルールで使っていた。
その辞書は小学生向けのものだった。
中学生になるともっと大人が使用するようなものを買ってもらった。
ルールは同じ。
赤鉛筆で線を引いた。
実家から辞書を持ってきて、今度から分からない言葉がでてきたら
紙の辞書で調べてみよう。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?