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AIに小説の批評をお願いしたら

 GoogleのAI、Geminiにnoteに投稿した掌編小説の批評をしてもらいました。今回の記事は、自分でも創作をなさる方の参考になるかなと思って書きました。創作をなさらない方、AIの能力に興味のない方には退屈な記事になると思うので、無視して下さい。

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 GoogleのAIは、以前BIRDと呼ばれていた頃に、何度か利用しました。その時の印象では、明確な答えのある問いだと、かなり間違いがある反面、村上春樹さんの『街とその不確かな壁』の批評では、私の問いに答える形で、鋭い分析をしてくれました。発売直後なのに、どうやってこんなに分析できるのだろう(ネット上に手本となる批評がないはずなのに)と思ったものです。
 答えのある問いには弱く、文学的な問いには強いというのは、AIの性能としてかなり謎なのですが、答えのある問いは、わざわざAIに聞かずに、自分で検索しろということなのかもしれません。
 
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 noteに書いた掌編小説一作目の『フレディと石井』は、途中で話が飛んでしまったので、まず二作目の『理想の異性』について訊いてみました。

 ストーリーは、語り手と亀井の会話を「数年後」とした以外は、全て正確に読んでいました。「数年後」の部分は、そうであっても全く問題ない、というか、そうした方がより自然だったかもしれないです。書き直すなら、同窓会での会話にするかもしれません。
 登場人物三人の人物像も正しいですし、テーマも「友情、成長、ジェンダー」だと分析しています(テーマを掲げるほどの小説ではないですが、間違ってはいません)。

 感想は、正直なところ、褒めすぎでしたが、素人相手に厳しくしてもという開発者の意向があるのでしょうか。ただし、改善点が鋭いので、釣り合いが取れています。

  • 鶴野さんが弁護士を目指して頑張っている様子がもう少し具体的に描かれていれば、より読者の共感を呼ぶ作品になっただろう。

  • 亀井君の差別的な発言に対する岡田さんの反応がもう少し詳しく描かれていれば、作品に深みが増しただろう。

 どちらも、正しい指摘だと思います。字数の関係や、弁護士試験を受けた知人が身近にいなかったこともあり、簡単な文章になってしまいましたが。

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『四月は残酷な月』についても、AIはストーリーや人物像、構成などほぼ正しく読み取りました。
 一点だけ私の意図と違ったのは、飯塚さんの人物像を「おとなしく控えめな女性。レジの札を盗むという罪悪感を抱えながら、懸命に働いていた」と読んだことです。彼女が「不器用なのに、懸命に働いている」と好意的に見たのは、語り手です。飯塚さんを好きなので、そう見たのです。私としては、飯塚さんは「レジの金を盗むプロ(おそらく常習犯だと私立探偵も指摘しています)、金を少しでも多く盗むために、多くのシフトをこなした(そのせいで、熱心に働いているように見えただけ)」のですが、私の描写が拙いせいで、誤読されてしまったのだと思います。または、若い女性に対する見方が甘いということで、Geminiは男性の感覚に寄りがちなAIなのかもしれません。

改善点は、二つ。

  • 飯塚さんが盗みを働いた理由がもう少し詳しく描かれていれば、より読者の共感を呼ぶ作品になっただろう。

  • 木崎と本宮の恋愛関係が発展していく可能性を感じさせるような描写があれば、よりドラマチックな作品になっただろう。

 これは、どうなんでしょうね。飯塚さんが盗みを働いた理由がどうであれ、木崎の失望は変わりません。正直なところ、令和の今、レジ窃盗もやむを得ないと思えるような事情があるとは思えませんし。だとしたら、作品のテンポ的に、この場に登場していない人物の背景を詳しく書くべきなのか…。これと似たような迷いは、小説を書く上でよくあります。こうした疑問を解決するために、創作教室に通おうかなと思ったりもします。
 木崎と本宮の今後の関係につながる描写も、あれば確かに深みが増したかもしれません。今の頼りない木崎に、本宮さんが好意を持つかどうか、わかりませんが。

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 『Last of Tanu』についても訊いてみました。前二作品は、回想かリアルタイムの話かの違いはあれど、直線的でわかりやすい小説です。普段、小説を読まない人でも理解できる話でしょう。でも、『Last of Tanu』は、「ぬいぐるみのたぬきがたぬ族の王子である」という設定を受け入れて暮らす家族の話です。時間軸も今→過去の回想→今、とやや複雑になっています。「こんな話を投稿して、理解してもらえるだろうか?」と思いつつ、投稿した作品です。

 しかし、AIは設定やストーリーを正しく理解しました。間違ったのは、たぬきをアライグマと考えた点だけ。たぬきは主に東アジアにしかいないので、混同したのでしょうか。

 また、「設定が難しいため、読者によっては理解できない」「冒頭のテンポが悪い」等改善点を指摘しながらも、「ファンタジーとファミリーストーリーが融合した楽しい話」と小説を褒めるのも忘れません。冒頭のテンポが悪いのは、もっと長い小説でもいつもそうなりがちなので、やっぱりなあという感じでした。
 Geminiは、かなり変わった小説でも、問題なく理解できるようですね。

 ちなみに、マイクロソフトのAIにも批評を頼みましたが、数行で小説をまとめた後で「面白いね! 良かったよ!」と褒めるだけでした。
 Chat GPTはもう少し詳しかったですが、やはり褒めるだけでした。
 自信がほしい時には、Chat GPTもいいかもしれませんが、普段の批評はGeminiにお願いした方がよさそうです。いずれも無料版で試しました。

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 最後に、noteで投稿している掌編小説の宣伝を。
 シロクマ文芸部に参加する形で週一投稿を目指しています。木曜夜八時にお題が発表されるので、その日のうちor忙しい時は翌日に口述筆記も交えながら、ほぼ即興で書くようにしています。即興なので、話にオチを作れない時には、 「なんのはなしですか 」企画に参加してごまかしています。

どの作品も単独でも読めますが、登場人物が再登場します。

岡田瑞樹 『突然消えた剛ではなく、フレディとほんの少しカールスモーキーのこと』と『理想の異性』の語り手。中高時代はバンドをやっていた。法学部出身。たぬきのぬいぐるみをたぬと名付けるような適当な性格。

本宮光留 瑞樹の親友。『フレディ』『理想の異性』『Last of Tanu』に名前だけ登場。

本宮朱莉 光留の娘。『四月は残酷な月』の主要登場人物。『Tanu』に名前だけ登場。女子美術大学の学生。カフェ《砂時計》でバイトをしている。

 瑞樹の息子。『Tanu』の語り手。高級スイーツ好き。朱莉より年下。

彼らの生活を垣間見るような連作にできればいいなと考えています。


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