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国立近代美術館『TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション』


 東京国立近代美術館で開催中の『TRIO  パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション』を鑑賞しました。

これは、近代美術館とパリ市立近代美術館、そして大阪中之島美術館のコレクションを集めた特別展です。大都市にある美術館三つということで、都市にまつわる絵が多かったですが、他にも、「夢と無意識」「響き合う色とフォルム」といったテーマに沿った絵も三館から集められています。

出迎えてくれたのは佐伯祐三の『郵便配達夫』。去年開催された佐伯の特別展でも一際目立った絵です。

郵便配達員

 大阪中之島美術館は、佐伯祐三の絵を最も多く所蔵する美術館です。私が子どもの頃から美術館の構想があったのですが、なかなか着工されず……それなのに、美術館に飾る絵だけは着々と購入されるという、大阪市らしいことになっていたんですね。計画凍結を乗り越えて、2022年にようやくオープンし、佐伯の絵を鑑賞できるようになりました。TRIO展には『郵便配達員』以外にも佐伯の絵が数点出展されています。

 以下、気になった絵を何点か紹介します(適当に撮ったので、雑な写真でごめんなさい)。

「川のある都市風景」の一つ、小出楢重の『街景』です。大正末期の大阪の街を描いた絵。

「都市と人々」というテーマに基づくユトリロの『セヴェスト通り』。佐伯祐三が描いたのとほぼ同時代のパリの風景です。

これも「都市と人々」の一つ、河合新造の『道頓堀』。昔の道頓堀って、こんな情景だったんですね。大阪が水の都だったのがよくわかります。

「加速する都市」の一つ、フェリックス・デル・マルルの『オルレアン駅のメトロ』。20世紀の初めには、地下鉄の駅は未来を象徴するような場所だったのでしょうか。

「都市の遊歩者」、ユトリロの『モンマルトルの通り』。ユトリロらしい絵!

「女性たちのまなざし」の中の藤島武二『匂い』。この方の絵はこれまで何点か見ましたが、風景画も人物画も好きです。この女性を主人公に小説を書きたくなるような絵だと思います。

「美の女神たち」の中のマリー・ローランサン『プリンセス達』。学生時代に好きだった画家の一人です。去年の特別展も行けばよかった…。

こちらはレオノール・フジタの『五人の裸婦』。フジタの絵は数枚しか見たことがないのですが、けっこう作風が広いのでしょうか。特別展にも何枚か出展されていましたが、この絵が一番好き。
ちなみに、常設展にあったフジタの戦争画『薫空挺隊敵陣に強行着陸奮戦す』もすごい迫力でした。太宰治の『惜別』もそうですが、一流の芸術家は国策に基づく作品を作っても、プロパガンダには堕さないということがよくわかります。


他にも、写真や抽象絵画などもありましたが、自分の興味の範囲外なので、素通り。モダンアートを網羅した特別展なので、もっと尖った絵を見たいと思う方でも大丈夫です。

会場の外にあった三都市ガチャ。大阪弁があるだけで絵になる。ボンジュールはどうでっか?なのか。大阪のメーカーさんはまいど、と言ってたけどな。

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 今回は、常設展も見るつもりで時間に余裕を持って出かけました。その中からいくつか紹介します。

まずは中村彝の『エロシェンコ像』。これまでにも何度か取り上げましたが、今年が没後百年のメモリアルイヤーにあたる方です。

パウル・クレーの『花ひらく木をめぐる抽象』。抽象画はよくわからないのですが、クレーとカンディンスキーはお気に入りです。少し前に読んだ川端康成の『古都』にもクレーの話が出てきたので、それを思い出しつつ鑑賞しました。

岸田劉生の『壺の上に林檎が載ってある』。『麗子像』しか知らなかったのですが、この絵も、風景画もとても良かったです。


村山槐多の『バラと少女』。noteでフォローしている方のお気に入りの画家です。

長谷川利行『お化け煙突』。作家だったら間違いなく破滅派と呼ばれる人生を送った画家です(ホームレスが入所する養育院で亡くなりました)。千住にあった火力発電所を描いた絵です。

シャガールの『ふたり』。色使いがとても綺麗な絵でした。ぜひ実物を見ていただきたいです。

 日本画も速水御舟・鏑木清方・横山大観などの絵があったのですが、ガラスケースに入っていてうまく撮れなかったので省略します(特に大観の絵が良かったです)。常設展の方も近現代の美術品を網羅してあり、特別展だけ見て帰るには惜しすぎる展示でした。

国立近代美術館は地下鉄竹橋駅からすぐ。北の丸公園の外れにあります。この特別展は8月25日までと会期も長いので、東京にお住まいの方はぜひご覧になってみて下さい。







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