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『祈砲花火』まずは、上を向いて。

5月15日、神道山(黒住教本部)から25発の大きな花火が打ち上げられた。

今回の主催は岡山県下唯一の花火製造会社「森上煙火工業所」さん。私たちは協力させていただく形の座組だったのだけど、2週間以上が経った今でもこうして文字に残したくなった。

「神道山から花火を上げるなんてすごいね」的な驚き半分のお褒めの言葉を有り難くいただいたが、正直これは本当によく実現できたと思う(笑)

というのも、実は今回の話は相談を受けてたった10日間で開催当日を迎えたからだ。

得てして宗教法人に限らず、昔ながらの組織というのはゆっくりしている。
一般企業等と比べると、想像がつかないほどコンサバな組織である場合が多く、少なくとも黒住教はスピード感のある意思決定が得意とは言えないし、リスクのある案というのはどうしても避けられがちである。それでも短期間での実現に至ったのは、私たちの組織の中からも 世のため人のために何かしたい という衝動が溢れ出た結果だったと思う。

私自身がもともと非常に花火好きなことや、花火の起源を知っていたこと、森上さんと紡がれたご縁から、これは必ず実現させる義務すらあると直感した。

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日本の花火大会の起源は、江戸中期の享保の大飢饉やコレラに悩まされた8代将軍・徳川吉宗が隅田川で祈りを込めた花火を打ち上げた「両国川開き」が隅田川花火大会になったことだとされている。そのため、東日本大震災(2011)や西日本豪雨災害(2018)の直後にも、被災者の鎮魂と地域の復興の祈りを込めて、こうして花火が打ちあがった。

エンタメやお祝いの花火も大好きだが、今回も 祈りの花火 だ。

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『祈砲花火』

今回の取り組みは森上さんに提案し、『祈砲花火(キボウハナビ)』と名付けた。

マスメディア等では、分かりやすく疫病退散と報じられたかもしれないが、実行に携わった立場の人間同士では上記のコンセプトの想いを共有した。

前回のエントリーでも触れたように、誰しもが持つ何かを信じる心で、本気で祈ったり願ったりすると、きっと誰か/何かが、背中を押してくれると私は信じている。それは身近な誰かかもしれないし、神様やご先祖さまや自然による目に見えない力かもしれない。

そのためにも、希望の灯 が消えてはいけない。

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全国的にも、このような新型コロナウイルスの終息を願った花火の取り組みは増えてきていると聞いたが、私たちは神事に重心を置き、私自身が斎主をつとめた。

全国の花火師さんは現状、売上が例年の約1割だとか。
そんな中で、自分たちに出来ることが何かないかと考えて世の中のために無償で取り組んでくださる姿勢には頭が下がる。

こちらの動画を是非見ていただきたい。

私は運営スタッフでもあったため、真下から花火を見ることが出来た。

時節柄人が集まってしまって「密」にならないように、無告知・サプライズでの実施とせざるを得なかったことは残念ながら仕方ないと思っている。

岡山の地域の人たちに!という気持ちを自分の中で一番に持っていたが、正直言って私自身にだって未曾有の出来事へのストレスや、今後への不安がある。そんな中で、もしかしたら一番近い場所で励ましてもらったかもしれない。真下から見させてもらったもんだから、それはそれは真上を見上げた。

まずは、上を向いて。

世の中全般においても、緊急事態宣言がやっと解除され、街が活気を取り戻しつつある感じがする。

だけど引き続き、油断は禁物。

「油断」という言葉の語源は、昔中国の王様が臣下に油が入った容器を持たせ、一滴でもこぼしたら命を断つと命じたことからくるという説が有力らしい。

私たちが生きる時代における油断の本質はなんだろうかと考えると、ゆったり、のんびりした心だけではない気がする。不安、嫉妬、ストレスなど、現代ならではの避けられない心の機微があると思う。

黒住教の教祖宗忠はこれを、迷い という言葉で説いている。

「迷えば魔寄ると申して、人の心が迷う時は、その虚(きょ)へつけ込み、悪魔がより集まりて様々の因果たたりをいたす。油断はならぬぞ。」(出展:三十ヶ条)

迷い=心の虚=油断 と捉え、前向きな心で過ごすことが大切なのだと私は思う。こういう時に一人一人が意識するべきは、疫病退散よりも、自分の心を祓い清めることだったりするかもしれない。

各地で鯉のぼりが泳ぎ、花火が上がり、私たちはまずは顔を上げた。
正面を見据えてここからがスタート。

新型コロナに対する姿勢は、「Against」ではなく「Beyond」が正しいと私は思っている。乗り越えた先には、新たな日常への冒険が私たちを待っています。

6月も、楽しく 元気に!!

追伸
どうやら今夜も、日本のどこかで花火が上がるとかなんとか。

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