さすらう
僕は、思いついたら1人旅に出かける。
普段の休みは計画的動いているからか、旅に出るときは行き当たりばったりでいく。
ほんとに「そうだ、京都に行こう!」ぐらいの感じで行っちゃう。
最小限の荷物をバッグにいれて、家を出発してからどこに行こうかを移動しながら考える。
だいたい行くところを決めたら、あとは思いつくままブラブラしている。
無計画に見えるかもしれないし、もっと効率良く回れば良いのにと思う人もいるかも知れないが、あえて、この形で貫くようになってしまった。
なぜならば、観光名所を効率的に回るよりも、目的地の途中で寄り道したり、立ち止まったら、たまに自分にとってとてつもなく、面白い出来事が起きることに気がついてしまったからだ。
あれは、10年近く前に豊島という島旅にいった時のことだ。
島全体が現代アートになっている島で、のどかな時間が流れている中で突然変わった作品が出てくるので、とても楽しい。しかし、伝えたいことはそこではなく、寄り道した先に起きていた。
島全体がアップダウンをしているので、旅行者は電動自転車をレンタルして移動する。
目的地の豊島美術館の途中で分かれ道があり、左に行けばすぐにたどり着くのに、ふと右に行ってみようと思い、右の道を選択する。
民家に人が集まっており、何をしているのか聞く。
どうやら島民の誕生日会があるみたいだ。
よかったら一緒にどうかと島民から言われたので、これも何かの縁かと思い参加する。島民に、誕生日を聞かれて答えたら、驚いた顔をされる。
その時の誕生日会で、印象に残っていたのは、キレイな島民の女性が、自分を捨ててどじょうすくいをしていたことと、4月誕生日の島民を発表していたことだ。
「今月の誕生日は4月◯日の、aさん、✕日のbさん…そして、なんと今日が誕生日で、たまたま旅行で偶然、居合わせた網村さん!」と読み上げられ、島民のみんなの祝福を受ける。
そう、たまたま僕は誕生日の4月30日に旅行をし、たまたま島の誕生日会に居合わせて、たまたま島民に祝福されたのだ。
とても嬉しい出来事だった。名前も知らない初めて出会った人へのおめでとうと言ってもらえる島民の心の温かさを今でも思い出す。
こうして僕は旅をするときはいくつか行きたい所を決めて、あとはその時、その時でさすらうようになった。
僕にとっての大事なことは、寄り道した先にあるのではないか。
そう思わずにはいられない出来事であった。
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