エンドロール

「最後の最後になにか仕掛けが待っているかもしれないよな?」

当時付き合っていた彼は、映画を観終わったあと、まるで私の心の内を察しているかのようにそう言った。

「ああ。この人、私と同じだ。」

そして、その言葉に妙に安心したのを覚えている。

私は、付き合うまでにきちんと段階を踏みたいタイプだ。行動力はあるほうだが、無鉄砲に動きたくはない。人並み以上の計画性を持ち合わせている、と思う。

友人の紹介で知り合って付き合った彼も、行きつけの居酒屋でよく会う彼も、サークルの先輩だった彼も…

相手のことを深く知るために、付き合うまでに何度もデートした。

中でも、私は必ず「映画デート」に行く。できれば、序盤で。

ここで合わないなあと感じてしまうと、いくらトークのセンスがピカイチでも、美味しいお店をたくさん知っていても、おそらく好きになることはない。

メッセージでやりとりしている雰囲気となんか違うなと感じても、服のセンスがイマイチでも、その点に関してはさほど気にならない。

「エンドロールが終わるまで席を立たない人であるか」ということが、私の中で一番大切な項目だ。

実際、映画館にいると半数くらいの人はエンドロールが始まると徐々に席を立ってしまう。それを見ていると、少し残念な気持ちになる。

エンドロールを観るか観ないか。たったそれだけのことかもしれないが、その行動を通して私はその人の本質に触れることができたような気がする。

エンドロールに仕掛けを期待していた彼とは、結局1年ほど付き合って別れてしまったが、彼と過ごす毎日は驚くほど穏やかで、あのとき直感で感じたことは間違いではなかったんだな、と自信を持てた。

以来、私は必ず付き合うまでのデートで映画館に行っている。

昨今の状況を踏まえると、映画館へのデートは以前より難しくなってしまったかもしれない。ソーシャルディスタンスを保っての映画鑑賞には、どこか味気無さを感じる。

はやく元通りの生活が戻ってほしいと思うばかりだ。

…の前に、一緒に映画デートをできる相手を探さなければ!(笑)

では、また。シーユー。

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