見出し画像

人は、たやすく鬼になる

先日、街に出た帰り道で、鬼に遭いました。

地下鉄に乗りこんで、座席に座ったら、目の前に肩を怒らせた男性が着席。着席するなり、急に立ち上がり、自分の後ろにある、コロナ対策で換気用に開けていて窓を、怒鳴りながら叩き閉めました。

とっさに、あ、鬼だ、と思ったわたし。

すぐに席を移動して、その場を離れました。鬼は、わたしが席を移動すると、わたしが座っていた席の後ろにある窓も、怒鳴りながら叩き閉めていました。

こういう特徴があると、その人は鬼になっています。
人の言葉は届きません。距離をおくしか手立てがありません。

[鬼の特徴]
・狐目(目が釣り上がっている)
・口角に泡がついている
・怒って、怒鳴り散らしている(誰かの過失を責める、とかではない)
・周りに人がいないような振る舞いをする

鬼に初めて遭遇したのは2008年。
リーマンショックの時。

いつものように仕事帰りで、最寄駅で下車。階段に向かおうとしたら、スーツ姿の男性が、やはり狐目になって、持っていたビール缶を思っきり、駅名が書かれた看板の支柱にぶつけました。
飛び散るビール。唾。怒号。瞬時に彼を避けるようにできる人波。周りの人は関わりを持たれないように、足早にその場を去りました。わたしもその一人。

ただただ怖かった。

ああ、鬼っていたんだ。人が鬼になるんだ、と大学時代に習った民俗学の講義を思い出しました。


その2年後。わたしも鬼になりました。

海外長期遠征(東アジアのフィールドワーク)で大手を振って出たものの、体調を崩し、挫折。成果乏しく帰国し、謎の病気で日に日に身体が動かなくなる…
遠征前。リーマンショックで、運悪く市場価値が蒸発してしまった人の末路を、嫌というほど見てきました。
なので、どんどん身体が動かなくなり、アップデートをつづける市場から自分がかけ離れていくスピードに耐えられなくて、猛烈な焦りと、恐怖、悲しみに支配されていきました。

結果、鬼の道へGOです。

あまり思い出したくありませんが、それはそれはひどい言葉で、家族に八つ当たりしたものです。口角に泡は吹いてなかったと思うけど(いや、あるかな)、活実に目は狐目になってました。

人って、簡単に鬼になるんですよね。

鬼滅の刃が、鬼の本質に改めて言及してくれていますが、鬼は、悲しみのようなマイナス感情の中から産声を上げます。漫画では、鬼舞辻無惨がトリガーの役割を果たします。現実の世界では、マイナス感情の総量がトリガーになります。マイナスの感情が、その人の心の臨界点を突破した時、人は鬼になるんです。

人ごとではありません。わたしも鬼になるポテンシャルがあります。というか、一度なってますしね。もし、もう一度鬼になるとしたら、禰󠄀豆子のように、人を守る鬼でありたい。ご飯食べられないから、お腹減りそうだけど。

小夜ふけて 戸に戸に鬼の すすり泣く
すすり泣く夜も 星はまたたき


鎮まりたまへ。鎮まりたまへ。


ごちそうさまです。

まさかお金が振り込まれることはあるまい、と高を括っているので、サポートされたら、とりあえず「ふぁ!」って叫びます。