「つながり過ぎた世界の先に」を読んで


マルクス・ガブリエル氏はドイツの若き哲学者でボン大学の教授です。

本書はコロナ前後の世界の変化について鋭く洞察されています。

2019年以前の秩序は終焉した。

著者自身、このパンデミックを境に思想家としての考え方が大きく変わったそうです。社会全体を見直し、祖国ドイツとじっくり向かい合う生活をするようになったと述べられています。

人とウイルスのつながり、国と国のつながり、他者とのつながり、新たな経済活動のつながり。
今回のパンデミックはグローバル化社会において人々が「つながりすぎた」時代ゆえの災厄と言えるでしょう。

他者とのつながりにおいて、SNSの在り方についても述べられています。
ソーシャルメディアは本来の自分ではない自己を押し付け、新たな自己を生み出し、そしてその生み出された誤った概念に基づいて人々は行動を起こしてしまう恐れがある。氏はこのことに警笛を鳴らします。

確かにSNS上の誹謗中傷は大きな社会問題ですし、SNS上で議論をしても深い議論までには及ばず、ただ罵り合って終わってしまうケースもよく見かけますね。

メディアによる感染者数や死亡者数といった「数」の公表についても疑問を投げかけています。そこに何の意味があるのか。「今日学校で褒められた子供の数」を公表されても誰も関心を持たないのと同じではないのか。
それよりも、感染者の中で何人が発熱したのか、何度まで上がったのか、どのような症状が多いのか、予測され得る感染経路は何かといった情報の方がずっと役に立ちそうですね。

そういえば解剖学者の養老孟司氏は、自分の目で確かめたわけではない "数" を公表することについて、“実生活を上から目線で捉えている" とご著書「ヒトの壁」で述べられていました。

私自身もパンデミックの前後において、自分の生活スタイルは大きく変わりました。SNSを積極的に始めたのもその一つの変化かもしれません。

新たな価値観が生み出され、新たな世界観が創り出される。
そんな世界を、私なりに歩んでいきたいと思っています。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?