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初めてのご飯 ~カエル日記#5~


前回のエピソードはこちら…↑↑

私たち生き物は、生きるためにご飯を食べる。

もし食べなければ、死んでしまう

ニホンアマガエルのつくしを飼い始めて数日の「カエル初心者」の私にとって、つくしにご飯をあげるということは、今後つくしが元気に生きていけるかどうかが決まる、最大の難関だった。

野生のカエルは、動いている虫を食べている。
動いているものに反応するのだ。

ネット情報では、カエルの餌として、カエル用の練り餌、カメ用の練り餌、乾燥コオロギ、ペット用に販売されている生きたコオロギやダンゴムシ、が挙げられている。中でもコオロギへの食いつきはとても良いらしい。ただ───

私としては、生きた虫を家に置いておくことに抵抗があるので、できれば練り餌か乾燥コオロギを食べて欲しい、と思っていた。

ちなみに、練り餌や乾燥コオロギと言った動かないものに関しては、ピンセットで挟んで与えるのが一般的なのだが・・・ピンセットの存在を知らないカエルにはまず、ピンセットに慣れてもらわなければならない

もし、ピンセットに慣れてくれなければ練り餌や乾燥コオロギは食べてくれないだろう。

不安だらけのつくしのごはん。私は途方に暮れかかっていた───しかしここで私が弱気になってしまえば、つくしの未来は永久に閉ざされてしまう。

せっかく私のところにやってきてくれた、小さなつくし。私のちっぽけな不安やコオロギに対する苦手意識でつくしの未来を断つわけにはいかない。

「よし!」

私は腹を括った。
意を決し、私は生きたコオロギを購入することにした。

数日後、Amazonからコオロギが届く。

恐る恐る茶封筒を開けると、5mmにも満たない透明~白色のコオロギが、おがくずと丸めたキッチンペーパーとともに袋に入れられていた。

思ったよりも小さくて白かったので、「キャー、虫~~!!」という感じはあまりしなかったが、虫が得意でない私にとっては見ていて心地よいものでもない。

しかし、そんなことも言っていられない。かわいいつくしのためだ。昆虫用の小さなケースにそれらのコオロギを移して、いざ、つくしのご飯の時間である。

まずはつくしのケージの隣にコオロギが入ったケースを置いた。するとつくしが動き出し、隣のケースが見える壁に張り付いた。そしてガン見している。どうやらつくしには、動き回るコオロギ達が見えているようだ。

コオロギをつくしのケージに入れるためには、私がピンセットでコオロギを捕まえ、そして運ばなければならない。つくしの口を傷つけないように買った木のピンセットに四苦八苦しながら、ちっちゃなコオロギを摘まみ、つくしの元へ。

すると───

「パクッ!」

とんでもない勢いでつくしがピンセットに食いついてきたのである。

私はびっくりして、ピンセットを落としそうになった上に、つくしが食べる瞬間を見逃してしまった。

「今・・・食べたよね?!」

つくしに話しかけつつ、コオロギが挟まっていたはずのピンセットの先を確認する。何も挟まっていないピンセットを見る限り、つくしが食べたことに間違いない。ウチに来てから、こんな素早く動くつくしを私は初めて見た。

コオロギへの食いつきは良いというネット情報は間違っていなかったことを実感し、2匹目へ。私がコオロギをピンセットで捕獲するのに手間取っていると、まだかと言わんばかりに前のめりの姿勢でこちらをうかがっている。

大きくてまん丸な目で私を見つめてくるつくし。

初めて見るつくしのそんな姿を嬉しく思いながら、ようやくコオロギを摘まんでつくしのケージへ───

2匹目も一瞬にしてピンセットに食らいつき、食べてしまった。

何匹あげるのが適量なのか分からぬまま、食べてくれるのがうれしくて4~5匹は与えた気がする。つくしは、すべてのコオロギを瞬時に平らげた。

ご飯を食べるかどうか心配していたが、逆に食べ過ぎの心配を私は忘れていた。

「・・・そろそろ、終わりにしようか」

次はまだかと、こちらを見つめるつくしに終わりを告げて、初めてのご飯は無事終了した。つくしが慣れていないピンセットを使わなくても食べられるように生餌を選んだはずだったけれど、そんな心配はまったく必要ない食べっぷりだった。

「ああ、良かった。これでつくしは生きていける。」

コオロギを食べて心なしか満足げなつくしを見てホッとした私は、自分のお腹も空いていたことを思い出したのだった。

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