お風呂好きなカエル 〜カエル日記#9〜
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生き物が生きていくために水は欠かせない。
植物に水をあげなければ枯れてしまうし、小学校で飼っていたニワトリやウサギの小屋にも必ず水の器が置いてあった。
なので、カエルのつくしを飼うことが決まったときも当然のように水の器を用意したのだけれど、実はそれは飲むために用意したものではなかった。
というのも、基本的に「カエルは水を飲まない」から。
では、どのようにして水分を得ているのか。
カエルは主に皮膚から水を吸収することによって水分をカラダに取り込む。そのため、毎日朝晩霧吹きで水を吹きかけたり、地面には湿らせたキッチンペーパーを敷いたりして、飼育ケースの中の湿度を高く保っている。
ただ、それでも本人が水分不足を感じたときのために「最後の砦」として水の器が必要になる。その水場にカラダを入れて皮膚から水分を補給するために。それはつくしにとって「命のオアシス」といえる。
つくしのカラダがすっぽり入るその水場の水、最初の頃は毎日ではなく、数日に一度だけ取り替えていた。ほとんど汚れていなかったので取り換える必要がないと思っていたから。
しかし、次第に汚れが気になりだした。
水は夜に替えるのだけれど、朝になると土で汚れていることが日に日に増えてきたのだ。
カエルは夜行性なので、人間が寝静まった夜に動き出し、水場で水分を補給しているのだろうとは思っていたが、どうやらつくしは土の上を歩いたり飛び跳ねたりして、汚れたカラダのまま水場に入っていることがあるようだ。
とはいえ人間とは活動時間が違うのだから、つくしが水場に入っている姿を実際に見ることはないんだろうな、と思っていた。のだが───
ある日の午後、私は見てしまった。
つくしの「あられもない姿」を。
私はひとり、紅茶を淹れ、お気に入りのクッキー片手におやつの時間を満喫していた。そんな幸せなひととき、何気なしにつくしを見ると・・・
なんと、水の器の淵に手をかけ、顔を淵に乗せながら水場に入っているではないか。
うっとりした顔で、まるで「いい湯だな」と温泉に浸かっているよう。
「つくしさん、お風呂入ってるの?」
思わず話しかけてしまった。
その姿はまるで、お風呂に入っている人にしか見えなかった。
きっと水分補給のために水場に入っていたのだろうけれど、つくしのその姿はあまりにほっこりしていて、午後のひととき、まるで私と一緒にリラックスした時間を過ごしているようだった。
とてもリラックスしているつくしのその顔に私は癒され、自然と笑みがこぼれる。
しばらくして、つくしはお風呂から出たけれど、水はかなり汚れていた。
水場の水は朝取り替えたばかりだから、私が見ていないわずかな隙を狙って、まるで小学生の男の子みたいに泥遊びでもしていたのかもしれない。やんちゃ盛りである。
でも、そんなつくしの様子を見て、私は思った。
「もしかしたら、水分補給だけでなく、カラダが汚れたら水場でそれを洗い流しているのでは?」と。だとしたら、ウチのつくしは案外きれい好きなのかもしれない。
その日以来、私は汚れた水場を見るたびに、
「お風呂に入ったの?」と
毎回、つくしに話しかけてしまう。
そして、つくしがお風呂に入った後の水は、1日経っていなくても替えてあげるようにした。
物価高騰のあおりで水道代もバカにならないが、きれい好きなつくしのためだ。親バカだと笑われても、私は毎回キレイな水でつくしをお風呂に入れてあげたいと思う。
つくしは私にとって「心のオアシス」なのだから。
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