ゼンマイ仕掛けを愛でる(腕時計編)③
機械式時計の醍醐味として、ゼンマイ機構であるムーブメントの機能美が一つとして挙げられます。
主に機械式の動力としては「手巻き」と「自動巻き」の2つがあり、「手巻き」は読んで字のごとし香箱の中にあるゼンマイを手で巻くため、そのムーブメントの全容が見えるものが比較的多く、機械好きの心をくすぐるものが多いです。製造されたのは古いのですが、今でも私の中で最高の機能美として君臨するのは「ランゲ&ゾーネ」の『ダトグラフ』で、その姿はもう美術品としても通用する美しさだと思います。(その姿は「ダトグラフ キャリバーL951.1」で検索してみてください)あとは「パテックフィリップ」のキャリバーCH 29-535も綺麗だと思います。
一方で「自動巻き」だと構造上、錘(おもり)であるローターがムーブメントの半分ほどを覆うので、一目でその機能美を堪能することは難しい。とは言え、メーカーによってローター自体に装飾を施したり形状を変えたりと、そのアプローチの方法はさまざま。それでも機械の構造美と言うものはある訳で、ローターや地板の彫金で現わしきれないものが面白味だと思っています。
そんな私が所有している時計の中で唯一、裏スケルトンになっているのは第1回目に紹介したゼニス社の「クラス・エルプリメロ」です。シリーズの中では入門編の位置にあるのですが、私が選んだ理由はシンプルで裏スケルトンになっているから。
最近のゼニスはローターのデザインに星形を取り入れて、大きく変わったのですが私はこちらの方が好き。(笑)実際、見た目にはランゲ&ゾーネのように各パーツの面取りが完璧ではありませんが、必要最低限の仕上げ方が逆に堪りません。
あと、機構が複雑になってしまうクロノグラフ(計測機能付き)ですが、カム式とコラムホィール式でもデザインは変わってきます。まぁ、そこはあくまでも好みでしょうか・・・。ちなみにエルプリメロはコラム式で、上の写真で言うと右側にあるS字パーツの下にあるのがコラムホィールだと思います。
やはりこういう金属から削り出した、数百個のパーツと共に歯車が動くさまは、見ていて何か感慨深いものがあります。そして、自分が動力を与える事で「チッ、チッ、チッ・・・・・」と時を刻む時計にロマンを感じてやまないのです。
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