嚢——あるいはアンドレ・ザ・ジャイアント 川柳27句
序 鏡子の家
写植してそれきりなにも無い雪野
踏み台を踏んで地球の割れる音
立像に前立腺がほぼ彫られ
グリーンの河馬を奨励するおとこ
重力をこまかく感じ眼鏡橋
笹だんご二個が一個にふえ世界
蜷川の並行宇宙での釣り具
破 鏡子の家と家——写真川柳七題
すべてソの音譜を燃やす祈念の日
猿人の輪に覆面をされた母
アフリカの海のかたちに写生する
貴種流離あぶさんまでの遠きこと
町の名を体力面で訊いていた
芸人の定規にすべて目盛りあり
檻すべてかもしれないが響く場所
急 鏡子の家と家と兼業農家
法皇のデータ野球に山頭火
序章にて腸の起源を書く愛か
霜降りて悪の結社の目玉焼き
ラスカルの神経網に触れて晴れ
お前にもユンケルくばる撞木鮫
ダイドーの松茸山で染みを抜く
さすまたの映画にいつもコマ送り
スカーフを電波の国で織りなおす
番茶から扁桃腺をつくる音
ののちゃんの武蔵野美大籠城記
ヤマト糊から月蝕のはじまりぬ
十月のヤマダ電機の蛭あつめ
デバッグを万葉集の素にして
もしお気に召しましたら、サポートいただけるとありがたいです。でも、読んでいただけただけで幸せだとも思います。嘘はありません、