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城(山のあなたの空遠く)  川柳88句


a. nの蟹、あれは無慈悲な夜の女王


地に迷い約一本のナイフ買う

絵地図貸し借りして帰るソビエト屋

つくば市に男尊女卑の硯見る

記録簿の箱男みな和田ばかり

朝潮がかつての古都に焼け残る

アボカドを軌道にはなつ長編詩

オペラ座に重曹はこぶ密偵ら

密室のトカトントンを裏打ちし

nの蟹ラッパに死せる人在りて

老老のモーターショーに拾う鍵

或る疑念あなたにとって欄間とは

パロディーの力場が消える木曜日

二科展の尾崎魔弓に冬の雨

死刑場からカラビナを盗み出す

凡句にてコールタールの充ち溢れ

自由律俳句作家を詠むカフカ

天丼が崩れるときの齣送り

三河屋の時間に吹雪物語

人の環に天動説のジョン・ウェイン

濁る世に絶えざる速水けんたろう

函館にドグラ・マグラを書く神父

蜆屋が佯狂をする予知夢の書

南朝がフロイトの視た滝を視る

鹿嶋屋の超現実にゴム凍る

武双山正士と渡る暗い橋

きのこ屋に存在しない由美かおる

上皇が回すうしろの百太郎

ひな壇にマッドサイエンティスト死す

地下を出て恐怖新聞買いなおす

雪を待つ恐怖新聞での誤食

街燃える市民ケーンの靴屋から

柏手をポランスキーの庭で打つ

散文にスケールモデル震えつつ

カツ丼の一点を突く虚無僧ら

α波の都市に塩鮭あり余る

嫂の仏壇叩きつづければ

洛中の無人地帯にクエン酸

渋皮に渾沌カオス秩序コスモスしのび寄り

みる貝をまいにち記す夢日記

同じ日にユングの割った窓硝子

コロセウムからの若草物語

小鹿の死ポテトチップス割り終える

定数にいきなり気付く流刑星

わたくしを現象させる天ぷら粉


b. 釘師サブやん、ここは地の涯

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