SILENT VOICE（夜のみだらな鳥）　　川柳80句

亀浮いて人造島に春の雪

鬼太郎を座らせて居る事件記者

クレーマーたちの毬藻が酸素吐く

異世界が滅びるまでのかぎかっこ

靴赤き忍者ドイツに潜り込み

崩れおつ氷室冴子のレゴの塔

蛸飯を乱歩夫人が妄想す

春浅しアフリカ象の時のなか

文体が最後に変わるつくね哉

蟹の船貴公子砂の村を出る

月をみてさらにみつめる情報屋

恥多き人生上のきのこ雲

如月の肺魚の家に治虫来て

季違いのピューロランドに笑い茸

無意識のサンマーメンを競りなおす

分身が居る佐賀県のパチンコ屋

ヘラルドの闇から闇へ不等号

アラジンの豆腐を想う愚者のむれ

犬笛のつづく遠山金四郎

チグリスの下駄を演算する姉妹

碁石塗る窒素の底のコーヒー屋

偈のまえに爆笑中の丘みつ子

シャンプーと下駄のもろとも凍りつく

チーズ屋が神の名を呼ぶ電話口

誇大妄想をはみ出し芋を煮る

湖が割れるゼノンのパラドクス

点景のコマンドサンボへの火難

度量衡目黒のさんま焼き尽くし

膠着語成るメガトンの夢枕

派出所が鎮西されて日脚伸ぶ

詩人らの脳裏に不死の高木ブー

アボカドの種へ鯨飲ひそかなり

詩の意味をイスラマバードとも重ね

超獣とアルジャジーラのてまえどり

溺れ谷成吉思汗の文字しらべ

鉗子無き雀荘を出る釈由美子

オーパーツ太郎次郎社地に建てり

テリーヌに意味の通じる文を彫り

一揆中ひとりで磨く試験管

倭の国のロボット兵を目くらませ

亡国後チキンスープをまた薄め

禅僧のチキンレースに横たわり

雪のあと鍛冶屋の原子崩壊し

魔太郎が来なかった日の点と点

傷ついてレプリカントののどちんこ

地の涯てに伊福部昭乱闘す

仮の世に歌舞伎撮らざるペンタゴン

門ひらく架空の姉のハム会社

タバスコをもらってけさの十牛図

ラモーンズ忍び返しを付け忘れ

ソフビ屋に沼正三の誤字みつけ

変装の詩人あつまる緑山

しりとりのルール乱れる諏訪社殿

果酒にがく準大陸の野球拳

ドラ乗って遂に葉書を書き終えず

陽のあたる場所場所ごとに古代染

重力に古代進の茶碗割る

ロジックの此の世が嫌いいらすとや

チボー家の互い噛み合うヘヴィ・メタル

火星人降り立つ村の無尽講

零時来る南青山北千住

霧島のロック・オペラに無音なり

死と生と海イグアナが群れて居る

醤油屋にクーベルタンの痴語はなす

十戒にキングコングの戒が無い

未来図に未来を含む走塁死

誕生日反重力者伝を書く

尿いばりするひとつの自我にモルグ街

頂上のおさななじみが土器を焼く

柔らかい個人主義者の湯漬盛り

シミュラクラ学会員の全仕事

陸に焼くビリー・ミリガンとのきのこ

コサキンがきのこ工場にて憑る

論理上イヴの総てに棲むわれら

帰宅部の壁村と行くでうす展

雪解けの街に長考する韮屋

餅の名の秋田犬からもらう詩語

愛人に監獄島の詩語尽きて

終着の浜辺に章魚の性器切る

夜ノ鳥醫院の前に男泣く

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