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名古屋八十八景  川柳88句

Ⅰ.アリスの国のアリス


アシモフの街に渚と云うチーム

医師群を浮浪生活者が孵す

監督と煮込みうどんの僅かな差

電機屋に中島らもの指紋採り

天上の刑事のポンのやりにくさ

警官のクリームパンを再読し

自転車が緑で兄が素潜りで

第三次大戦中の吊るし柿

影丸の里に中日ドラゴンズ

妹のバスだからこそ二階建て

錆の街海老を背負ったひとばかり

夜話として回転寿司を回すひと

メーテレの水平線に鳴るチター

自乗してアルミニウムの帽子脱ぐ

街を視る沼正三の後部席

ヤクルトを共産主義者かぞえぬく

あのレジも生物都市のみのもんた

曇天に森山塔を円で買う

内角が将棋に見える赤んぼう

ごぼう切るみんな蟹星雲として

地球儀が転がるだけの海豚館

鶏の翼よあれはべつの灯だ

短波なりランドマークが消えてゆく

原子炉のどこにグリコがあるだろう

日馬富士ひとり人形劇の夜


しじみから神を証明する時限


行列の名を無果汁と預言する


みなで消す防衛大のかぎ煙草


茉莉の森茶人の群れがなぎたおす


クレタ島民が再び剥くさなぎ


パンシロンすべてが上田馬之助


苔寺が一回性の文士劇


いつの日か申年がくる無を貸し屋

味噌カツが消化試合の仮装する

愛知するトリケラトプス展示会

ドラえもん図鑑を車掌群ひらく

推理してベートーヴェンの居ない街

朕がいまバイク改造する真昼

未来派のつくったテニスコート跡

虚構都市いつもいたちの旗掲げ

農大の川柳部からカドミウム

髙安の名前を訊いてまわる駅

球型の自我を持ちこむパチスロ屋

雛に刷り込む百円の缶ジュース


Ⅱ.星に降る都市



密室のバナナが饐えてゆく陽画

煙突にひたすらがあるソロパート

公園にご当地歌手のモキュメント

痴話というメタフィクションの団次郎

メンデルの箱にメンデル像を容れ

彗星を落語にすると長い夜

名古屋市の市歌が流れる提灯屋

キャラデザが金魚解剖者に似たが

殺し屋がいとこ煮の鍋もってきた

地球上すべてのバスを包む紙

悪魔くんグッズのなかのセメダイン

同一の高層ビルにやかんふえ

脚韻にまみれなかったテレビ塔

中日がホバークラフト撫でさする

戌年の山下清分身す

都市として映画雑誌の羊歯の影

名勝負製造機との女坂

客引きと野菊の墓を引き裂いた

倫理上あり得なかった豆腐街

宿に着く二次創作のラッパ吹き

大都市で輪島が投げてくるたわし

人間がみな巨人なる金魚店

くり返すかたくちいわし状念慮

アーケード内に転がる誰の犠打

写真家のごく目の前に盛るうどん

文法の上の義兄が鍼灸師

想像の象を殴った進次郎

無菌室での顔をする白瀬矗

全句集もらわれている冬の都市

原子炉の原子をのぞくひつまぶし


バベルへとただ降りつもる天ぷら粉


集団の幻視に蕪を抜く海部


季語もなく道に倒れる暗殺者


隆法の音波をあつめ朝の市


屈葬のあと建築に月曜日


唯我論みたいに箱の穴ひろげ


若者と土器のすべてという言語


自慰をする人それぞれに鳥の家

地下鉄の海野十三が飲んだ雨

馬映画部門のなかの授賞式

逆光の町に鳥山明の麩

電話機を持つものが減る純日本

空手家の記憶に馬頭星雲図

ノアたちの名古屋にさらば大茶会


#川柳 #写真 #詩歌 #文芸 #名古屋

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