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バカボン百景(無双)  川柳101句


Ⅰ.善の研究  三十四句

紫のバラの人ゆく夏の墓地

らくだ駆り純天皇のかよう寄席

根しょうがをみんな耐えぬく無音劇

現実に即すとケント・デリカット

炎昼や〈善の研究〉ばらまかれ

蛾に材をとって塚本火のごとし

碁の意味のどくろがふえる池袋

灸あつし意味と意味とをきりはなす

Tシャツを売って語頭に烏賊がつく

メンデルの憑きものおちる大酷暑

あれちうり展がるポップ・ミュージック

読んで字のごとく時停めバナナ僧

廃園のどこにもいないアナゴくん

鬼が死ぬエディプスコンプレックス下

日本の膣に恐竜ものがたり

血をしぶく男優というおのれたち

三世の体内磁石くるいつつ

詩でもなくほんのみじかい乾パスタ

脳髄とならべ霊感少女論

骨川が蚊の構造を書いてきた

パン焼けて徹子の部屋にくさりがま

大魔王つげの評論作業中

壺庭をみな逃げてゆくおすひよこ

ダイナモと代わりばんこの死の勝利

逃げ水が逃げた時から時間都市

かまやつに性欲があるキリコ展

ナジャ死んで人畜超えるおどり喰い

夕焼けて仏陀の国にやきうどん

寸止めのゲノム編集する暑さ

黄金の国に豚児のおとしあな

でぶ専とトルストイとがすれ違う

婆羅門の猪首に夢のまたつづき

ウォーターゲート事件にいつの韻

陰膳がたびたび欠けるドキュメント


Ⅱ.楚そのもの  三十三句


楚の国のリコーダーから楚そのもの

自慰すべし減菌室の美ノ海

サルトルの社会の塔をたてて居る

太陽の季節に祝詞する豚よ

さるぼぼとおなじ時空に積みあげる

あざむきのあざに喩えるめしのつぶ

みほとけを吾妻が描きぬ作り滝

実戦に牛を冷やしているあいだ

聖地球ゴマ高校に童貞ら

伊勢丹に猫型ロボとよびかわす

脳梁が白バイ隊におそわれる

二郎系ポケバイ・ブギのくりかえし

上野毛をさがすミニマルミュージシャン

百回忌アイスピックをひるま持つ

チョーさんが縮んでゆくよ新銀河

竹槍のある生活のグーニーズ

きんつばをびとびとにするニイチェの死

まんじゅうが濡れて太陽模型店

オットーの県人会に死んでいる

しのび逢い大腿骨をほしがる妓

冷奴ブロリと在って世界なり

フィクションの影絵のほかをつくらざり

茶の席へ意味のこぼれるペトリ皿

ながい夏茶人性癖ねじれけり

夏ばての猫に妖説太閤記

糸のこもギターも持たず渡り鳥

パクツイにみたことのない撞木鮫

画中画に指紋をうつすアントニオ

ソヴィエトの街に GODZILLA の嵐ふく

暗号をおぼえたままの腹上死

世界での影が苛酷なねぎばたけ

裂肛をまとめるときに云う酷暑

夏鴉墜ちゆく代々木ゼミナール


Ⅲ.バロウズ忌=バカボン忌  三十四句


絵日記のラカンに縦の線を引く

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