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呵責液
2020年5月18日 21:20
桃膠〈 とうきょう〉というものがある。桃の花が咲く頃になると、その柔らかな花が可愛らしい孫娘だとして、訝しい祖父のように見える幹肌に、鈴なりの琥珀色の宝石のように実るのが、桃膠だ。その様子から、かねてより大陸では桃花の泪、と呼ばれていた。その夕日よりも甘美な色の樹液の塊は、一日清水に漬けておくと、水を吸った分ふにゃふにゃと柔くなる。死んだばかりの子供の眼球のように膨らんで柔い桃膠と、氷河の