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vs,SJK:vs,……え? Round.2

「ハァハァ……ししし死ぬかと思った」
 後部座席へと回収された途端、涙目であえぎ怯えるシノブン。
 ブルマ姿での内股ヘタリ込みが妙にエロいな。肢体の発育がいいだけに。
胡蝶宮こちょうみやシノブ、改めて質問する。アナタが日向ひなたマドカへ固執するのは何故?」
「貴様! しゃあしゃあと何事も無かったように進展させるな!」
 憤慨ふんがいに喰って掛かる。
 若干じゃっかん、キャラが壊れ掛けてるけど無理もない。あんな目に遭わされたら、誰だってそうなる。
なお、回答を拒否すれば、再び宇宙遊泳へと戻す」
「おおお教えてやろう!」
 一転して恐々と承諾した。
 うわぁ、拷問のプロフェッショナルだぁ……クルロリ、恐ろしい
「で、シノブン?」
「……シノブンやめい」
 フレンドリーに努めるも、無下に応対される。
「ボクを捕らえて、キミは何がしたかったのさ?」
「貴様の〈ベガゲノム〉を解明するためだ」
「〈ベガゲノム〉なら、貴女あなたにも備わっているはずでしょう? わざわざマドカ様に固執する理由が解りませんわね?」
「やはり認識していないようだな、ラムスとやら。日向ひなたマドカの〈ベガゲノム〉は特殊なのだ。〈ヒトゲノム〉と〈ベムゲノム〉の両性質を同等に共存内包する事など不可能。前例が無い」
 ああ、そっか。
 確かクルロリが、そんな事を言ってたっけ。
「つまり、目的は〈エムセル〉そのもの──それを解析するために、日向ひなたマドカの拉致を画策していた」と、クルロリが要約。
「ですが解析して、どうしますの? 第三種四価元素が備わっていない以上〈エムセル〉の再現は不可能。どう足掻あがいても、私達では〈金属生命体〉にはなれませんわよ?」
 あごせんへと指を添えて、ラムスが小首をかしげる。
が目的は、そこ・・ではない!」
「じゃあ、人間社会へと潜伏して、地球侵略の足掛かりにしようと目論もくろんでいた──そんなところ?」
「そんな些事さじなど、どうでもいい!」ボクなりの推測をくちにした途端、癇癪かんしゃく的に吼えた。「ジャイーヴァ殿の目的は知らぬが、私の目的はそこ・・ではない! 斯様かよう画策かくさくをせずとも、我々〈ベガ〉が本気を出せば制圧など他易たやすい事だ!」
 ああ、そりゃそうか。
 現行科学常識をくつがえす超常生命体の集団だもんね。
「じゃあ、キミの目的は地球侵略じゃないの?」
「誰が! いつ! 侵略目的だと言った!」
 記憶を掘り返してみる──確かに、これまで『侵略』なんて一言も言ってないや。
 シノブンに限っては……だけど。
「ってか、紛らわしいんだよ! キミの言動は! あんなに悪役然とされたら誤解するだろ!」
「勝手に誤解をしたのは貴様達だ!」
「じゃあ、目的は何さ!」
「私とて歩いてみたいのだ……渋谷とやらを」
「はい?」「ふぇ?」
 予想外の独白を受け、間抜けた声をユニゾった。クルロリを除く二名が。
「ほほほ他にも〝ジェラート〟とやらを食してみたいし〝マルキュー〟とやらにも行ってみたい。それから〝スクィーズ〟とやらも欲しいし……それから……」
 真っ赤になって吐露し続ける。鬱積うっせきした願望が止まらない。
「勝手に行けばいいだろ! 渋谷でも秋葉でも!」
「私は、人間形態になれんのだ!」
 ……うん?
「なれないの?」
「そ……そうだ」
「人間形態に?」
「そうだと言っている!」
 ボク達のやりとりを傾聴けいちょうしていたラムスが、軽く困惑を浮かべる。
「確かに、総ての〈ベガ〉が〝人間形態〟になれるわけではありませんけれど……」
「元々、変幻自在な〈ブロブ〉には分かるまい……この歯痒はがゆさは……」
「シノブンってば、もとは〝地球人〟じゃなかったっけ?」
「……地球人だ」
「じゃあ、何で〝人間形態〟へ戻れないのさ?」
「だから、腹立たしいと言うのだ! 貴様は! 自分が如何いかに特別か……如何いかに恵まれているかを自覚していない! 私が……私が、こんな体質になって苦しんでいるというのに、も当然とばかりに変身変身と!」
「他に『蒸 ● 』もあるでよ? 生憎あいにく『バ ● ムクロス』とか『ゴーカ ● チェンジ』とかは無いけど」
「知らんわッ!」
 サムズアップでボケたら、烈火のごと怒気どきられた。
「幼少の頃から〈胡蝶こちょう流忍軍〉の次期頭領として育てられ、来る日も来る日も厳しい修行の毎日──比較的自由となった高校生活で、ようやく日常デビューした矢先に、この体質だ!」
 うっすらとにじむ目に唇を噛んだ。
「つまり、こういう事? 普通の女子みたいに日常を楽しみたいけれど〈ベガ〉の異形性がネックで叶わない。だから、ボクの〈エムセル〉を解析して、その変身性質を手に入れたかった──って?」
「そ……そうだ」気まずそうに視線をらし、彼女は真相を紡ぎだす。「ジャイーヴァ殿は約束して下さったのだ。日向ひなたマドカを捕獲すれば、その変身プロセスを解明して授けて下さる──と」
ふたを開けてみれば、何というか……結構、矮小わいしょうな理由でしたわね」
「わ……笑いたくば笑え!」
「別に笑わないよ?」
「何?」
 意表を突かれ、シノブンは驚きを見せた。
 呆気あっけとした表情で、ボクを凝視している。
「流行やプレイスポットって、やっぱ気になるもんね?」
日向ひなたマドカ、相手は〈宇宙怪物少女ベガ〉……そのような一般的日常価値観とは無縁の世界に生きる異形存在」と、バックミラー越しの一瞥いちべつにクルロリが否定。
「仮に〈ベガ〉だって同じだよ。楽しいものはやってみたいし、話題のスウィーツなら食べてみたい。可愛いものには萌えたいし、下らない雑談をするダベり場だって欲しい」
 そう断言して〝メイドベガ〟を見た。
 視線に気付いて、彼女は軽い苦笑にがわらいに肩をすくめる。
 それは無言の肯定だ。
「結局〝地球人〟だ〈ベガ〉だ言っても、ガールズライフは宇宙共通マストって事だね♪ 」
 満面の楽観笑顔で「てやっ ♪ 」とばかりにサムズアップ!
「理解不能」
 クルロリは無表情ながらも、腑に落ちない様子だった。
「ねえ、クルロリ? キミなら〝エムセル解析〟って出来るんじゃない? 作り主なんだし?」
「確かに〈エムセル〉は、私が改造生成した特殊細胞ではある。けれど、解析応用の可能性は未知数」
「ふぇ? 何故さ?」
「大前提として〈アートル〉と〈モスマン〉では〈ベムゲノム〉が異なるから。ことに〈第三種四価元素〉は〝炭素情報〟と〝珪素けいそ情報〟の推移変質に特化している。〝炭素〟から〝炭素〟への変質は、また異なるプロセス。従って、適応はおろか応用すら可能か不確定」
「……簡単に言って?」
「出来ないかもしれない」
 うん、シンプル・イズ・ベスト!
 小難しい理論武装テクスチャーげば、物事の真理なんてこんなモンだ。
「ただしジャイーヴァがおこなおうとしていた程度の解析は、多少の時間を費やせば充分に可能」
「って事は?」
「擬似技術での代用なら容易と思える」
「うん、それでいいよ」
 ボク達のやりとりを聞いていたシノブンが、怪訝けげんそうに訊ねてくる。
「貴様、何を言っている?」
「いや、だから協力するよ」
「何?」
「だって、そうすりゃシノブンも渋ブラできるんでしょ?」
「貴様、正気か? 私は〝敵〟だぞ!」
「敵じゃないよ?」
 あっけらかんとした返答に、一瞬、シノブンは言葉を呑んだ。
 そして、ややあって含み笑いを飾る。
「クックックッ……いいのか? これをきっかけに──私が〈エムセル解析情報〉を得た事によって、変身能力を得た〈ベガ〉が人間社会へとまぎれるかもしれんのだぞ? そうなれば侵略の危険性が増し、結局は貴様が戦う事に──」
「またまたぁ~? 照れ隠しに悪ぶってぇ~ ♪ 」
「うううるさい! どうして貴様は……そうやって毒気を削ぐ……」
 しおってくちごもった。
 何て言ったかは聞き取れんけど。
「それに平気だよぉ? 地球侵略しようってやからが、JKライフに興味抱くワケないじゃん。平和あっての日常なんだし ♪ 」カラカラと笑い流すボク。「それとも、シノブンはするの?」
「う……それは……」さすがに、を詰まらせる。「……しない」
「あ! でもさぁ、シノブン?」
「……シノブンやめろ」
 そこは頑として譲らないんだな。
 でも、いつもより語気が柔らかい。
 何故だろう?
 何故かしら?
 ま、いいや。
「一応、ひとつだけ約束してよ? エムセルの解析データはキミだけの秘密にして、他の〈ベガ〉には流通させない……って。ボクだって、戦闘頻度上がってJKライフ阻害されるのヤダもん」
「う……うむ」
 戸惑いながらも瞳は真っ直ぐだ。
 だから、そこに嘘はない。
「マドカ様らしいと言えば、それまでですけれど」献立こんだてレシピを閉じ、ラムスが平静に感想を述べる。「如何いかがですか? こういう考え無しで、楽観主義で、底抜けのお人好しは?」
 意味深含んだ眼差まなざしを、シノブンへと送った。
 その示唆しさを受け、彼女は想いを噛み締める。
「ああ、前代未聞の馬鹿だな……コイツは」
「ええ。この前代未聞のおバカ者が〝わたくしの家族〟ですのよ?」
「いま何つったーーッ! この豊乳メイドーーッ!」
「さて?」
 ペロッと舌出し。
 毎度ながらのかしましさを前に、シノブンは小さく呟いた。
「幸せ者だよ……オマエは」



 とりあえず、シノブンの件は解決した。
 話題は再び大局的な問題へと戻る。
 つまり〈ジャイーヴァ〉の事だ。
 クーラーボックスから魚肉ソーセージを頂戴し、ボクはクルロリへと訊ねた。
「モグモグ……で、結局〈ジャイーヴァ〉の目的は、何なのさ?」
「組織結成の意図は依然不明」
 クルロリが簡潔に答える。
「ベガ軍団を結成して宇宙侵略……でもなさそうだよね? シノブンの話を聞く限り。本格的な全面攻撃も仕掛けてこないし」不得意な憶測を巡らせた後、ボクは改めて貴重な情報源へと訊いてみる事とした。「ねえ、シノブン?」
「……シノブンやめろ」
 忙々とブルマ体操着から忍装束しのびしょうぞくへと着替えつつも、そこはやっぱり譲らない。
「キミは何も聞いてないの?」
「生憎、私も聞いてはいない。各自の目的が異なっていても、相互的メリットがあればしとする関係性だったからな」
「ラムスも……だよね?」
「ええ。以前、御話した通りに」
「う~ん? 八方塞がりか……。それに何故、ジュンを拉致らちったんだろ?」
「確かに、その辺はせませんわね。一般人の星河様をさらったところで、何のメリットもございませんもの」
「だよねー?」
 ボクは御手上げとばかりにシートに深く背凭せもたれ、シノブンへと視線を送る。
 気付いた彼女はまとった忍装束しのびしょうぞくを整えつつ、暗黙の否定に首を振った。
「まったく……ジュンをさらっても育乳大明神の御利益だけじゃん? 後は、せいぜい〈コンダクター能力〉だけだし……」
「……はい?」「……何?」
 急にラムスとシノブンの顔色が変わった。
「マドカ様? いま、何とおっしゃいました?」
「育乳大明神の御利益」
「……その後です」
「うん? コンダクター能力?」
「それですわよ!」
 どれですわよ?
「そういえば最初に会った時、口論こうろんの中でそんな事を言っていた。あまりにも自然に織り込んでいたので、すっかり失念していた」と、運転席からクルロリが感情とぼしく自己反省。
 もう、このうっかりさん ♪
「そんな重大な事、何故スルーなさっていたのです!」
 ラムスにしては珍しく血相変えていた。
「重大……って、UFO呼べるだけじゃん?」
「ですから、それが重大なのですわ!」
「ふぇ? 何で?」
 理解出来ないでいるボクへ、シノブンが助け船を出す。
「確かに局地的戦闘にいては実戦的ではない。だが、大局的な見地では、どうだ? もしも、他星系銀河からUFOを呼べるとしたら……」
「宇宙中の育乳信者が集まる」
「違うわッ!」
「つまり星河様のパワーレベル如何いかんでは、労せずして大軍勢を結成出来るという事ですわよ!」
「なるほど、合点がいった」と、クルロリのひとり納得。「どうして私に、アナタ達二人ふたり接触意思コンダクションだけが強力に届いたのか──他の人間による呼び掛けは微弱な感知だったのに。それはひとえに、星河ジュンの〈コンダクター能力〉に起因している。おそらく彼女の潜在パワーレベルは〈コンダクター〉の中でも驚異的に高い」
 ああ、だから幼少期からUFOと頻繁に遭遇してたのか。
「じゃあ、ジュンをさらった目的って──」
「おそらく」
「──いよいよ〝育乳教〟発足?」
「違う」
 クルロリ、淡々と否定して下さった。
 そして、彼女は今後の指針を決定着ける。
「もっとも、これは演繹えんえきに過ぎない。依然いぜんとして真相は不明。圧倒的に情報が不足している。直接、ジャイーヴァ本人に問い正すしかない」
「直接って、敵の本拠地? ってか、この〈宇宙航行艇コスモクルーザー〉は何処へ向かってるのさ?」
「月の裏側だ」と、シノブン。「そこにジャイーヴァ殿の拠点──つまり〝母艦〟が待機している」
「ふ~ん?」軽く納得すると同時に、ボクは彼女の行動に違和感を気付く。「あれ? シノブン、どしたの? 武装なんか確かめて?」
「実行前に万全の状態か確かめる……突入作戦の鉄則だ」
「って、もしかして一緒に戦ってくれるの?」
「フッ……何を今更いまさら
 クールにたずさえた微笑びしょうが、彼女の返答だった。
 と、運転席から振り向きもせずに、クルロリが警鐘を告げる。
胡蝶宮こちょうみやシノブ……そして、ラムス。その装備ではまんいち真空状態での交戦となった場合、要酸素生態のアナタ達は死亡確率が高い。よって、アナタ達にも〈PHW〉の着用を義務付ける」
「ちょ……ちょっと待て! また、あの〝ブルマ体操着〟を着ろと言うのかッ?」
わたくしも……ですの?」
「嫌ならば別仕様もある」
「う……うむ、それならば……」
「ふぅ……宇宙空間での活動では仕方ありませんか」
 そして、運転シートの背面に据えられたボックス台が開いた。ウィィィンと電動で。
 そこには、きちんとたたまれた〈PHW〉が二着にちゃく
 一着いっちゃくは、お馴染みの〝セーラー服仕様〟。
 もう一着いっちゃくは……。
「こちらにしますわッ!」
 ろくすっぽ見ない内に、ラムスが〝セーラー服仕様〟を奪い取った!
 音速かと思えるほど、シュババっと素早く!
 必然的に、残ったのはシノブンの物。
「ちょっと待てッ! 何だコレ・・はッ?」
 広げたと同時に激昂げっこう
 動揺と憤慨ふんがいが等しく混じっていた。
 無理もない。
 だって、まさかの〝バニーガール仕様〟だもの。
「ネット検索で書いてあった……『バニーガール最強!』と」
 だから、ドコのアダルトサイトを参照?
「ここここんな格好で戦えるか! 破廉恥ハレンチな!」
 某〝小 ● 川さん〟みたいな事言い出した。
 うん、でも拒否るわな?
「嫌ならば、先程の〈PHW〉になる」
「アレはアレで〝ブルマ体操着〟だろうがッ!」
「どっち?」と、無垢にクルコクン。
 軽いデジャヴの『どっ ● の料理ショー』が向けられる。
「う……うう……」
 究極の選択にテンパるシノブン。
 ってか、どっち選んでもエロッ!

「……やっぱ、そっち・・・選んだか」
「見るなぁぁぁーーーーッ!」
 シノブンは涙目&超絶赤面で、車内のすみへと丸まる。
 うん、選択は〝ブルマ体操着〟だ。
 それを例の忍装束しのびしょうぞくかさしている。
 しなやかに生える四肢には、薄く白肌がける暖色の鎖帷子くさりかたびら。そして、忍装束しのびしょうぞくの上から、豊かなバストをふっくらと浮かばせる白い体操着とムチムチブルマを着用。ところどころにはみ出した忍装束しのびしょうぞく木地きじが、なまじい乱れを感受させて悩ましい。
 エロッ!
 シノブン、エロッ!
「うう……何故〝胡蝶こちょう流忍軍次期党首〟の私が、こんなはずかしめを……」
「大丈夫! これで、一部マニアック層の人気は〝シノブンし〟に集中!」
「どんな励ましを向けているのだッ! 貴様はッ?」
 怒気どきられた。
 楽観的なサムズアップでフォローしただけなのに。
 コミュニケーションを取れるようになって、ボクは漠然と悟った──この人の立ち位置〝クールビューティー〟じゃなくて〝イジられ役〟だ。

私の作品・キャラクター・世界観を気に入って下さった読者様で、もしも創作活動支援をして頂ける方がいらしたらサポートをして下さると大変助かります。 サポートは有り難く創作活動資金として役立たせて頂こうと考えております。 恐縮ですが宜しければ御願い致します。