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vs,SJK:vs,……え? Round.4

「責任者出て来ぉぉぉーーい!」
 全身鋼質化の脚線美で、重厚なオートドアを蹴破けやぶってやった!
 敵母艦内──中枢ブロックでの暴挙だ!
 死に掛けた腹立ちも、もちろん込み!
 モロコミならぬモチコミ!
「な……何事だ?」
 予想外の乱入者に、部屋のあるじ狼狽うろたえる。
 立体的な黒い吊り目。銀一色いっしょくの風貌には体毛が一切無い。
 いわゆる〈グレイ〉と呼ばれるタイプの宇宙人だ。
 ただし、相違点も多い。
 まず体格は中肉中背。つまり、この時点で〈リトル・・・グレイ〉ではない。
 本来ならアーモンド型の立体眼は、目元と目尻が鋭角的にとがっていた。耳先もとがっていて悪魔的印象。そして、襟首えりくびが立った漆黒のロングマントを羽織はおっている。
 こうした禍々まがまがしい要素が相互的に助長しあって〝悪の首領感〟は倍増。
 シノブンからの事前情報と合致する容姿的特徴をかんがみて、ボクは確信する──コイツがボスキャラだと!
「オマエが〈ジャイーヴァ〉だな!」
「ききき君達は!」
「毎度ォォォーーッ! 来々軒アルよぉぉぉーーッ!」
「いえ、来々軒じゃありませんから」
 鼻息荒くボケるも、ラムスが冷静にツッコんだ。
「じゃあ、珍々亭でいいよ」
「もっとイヤです。実際、結構ありますけれど……その店名」
 室内には彼一人。
 ドーム状の壁面には、幾多の液晶モニターやらコンピュータコンソールやらが組み込まれている。
 要するに、此処は司令室だ。
 そして同時に、この組織がワンマン体制の一枚岩である事実も立証していた。でなきゃ、司令室が個室仕様って事はないもん。
「君達、どうやって此処へ? 我が〈衛兵ベガ〉は、どうした?」
「無駄ですわ。出会いがしらに片っ端から叩きのめしましたもの──マドカ様が。そして、貴方あなたも同じ運命を辿る事になりますのよ──マドカ様によって」と、ラムス。
 キミ、敵の矛先をボクへと集中させる気だろ?
 自分は安全圏内に構える気だろ?
 それも、ナチュラルに。
「し……しかし、この指令室の位置をどうやって的確に? それも、突入から短時間で! 全幅六〇メートルはある艦内だぞ?」
「ああ、道案内させたんだ」
「道案内だと?」
「こちらの方ですわ」
 ラムスにうなされ、ボク達の背後からモスマンベガが進み出る。
「ジャイーヴァ殿、もうめましょう」
胡蝶宮こちょうみやシノブ? キサマ……」
「…………」
「……………………」
「……………………」
「エロッ!」
「見るなぁぁぁーーーーッ!」
 涙目で恥じらい、ラムスの背後にうずくまるブルマ体操着。
 そんなに恥ずかしいなら、忍装束しのびしょうぞくのアンダーウェアにしちゃえばいいんじゃん? ──とは、教えない。面白いから(笑)。
胡蝶宮こちょうみやシノブ? キサマ、裏切ったのか!」
 あ、仕切り直した。
 黒幕なりに展開を気遣きづかった。
「これ以上は不毛。かつては協力関係に在ったがゆえたもとわかつ最後の忠言ちゅうげんです」
 ラムスの肩越しから、毅然きぜんたる眼差まなざしを返すシノブン。
 シマらない。
 いくらカッコつけていてもシマらない。
 敵からのアングルでは、凛とした表情しか見えないだろう。
 けれど、横に立つボクからは、モジモジと内股で身をよじさまがハッキリと。
「ど……どういう事だ! 変身体質を手に入れなくても良いというのか!」
日向ひなたマドカは約束してくれた──私に〝変身能力〟を授けてくれる……と。悲しい事ですが、もはや貴方あなたとの関係に固執こしゅうする必要も無くなった」
 心境の変化を告げつつ、ボクを一瞥いちべつ
 だが、悪魔面あくまヅラのグレイは聞き分けなくあらがった。
めろだと? 我が悲願を諦めろと言うのか! ようやく実行へとぎだした矢先だぞ! 今回の計画に、どれほどの労力をついやしたかるか? どれだけの情熱をそそいでいたか判るか? 総ては、地球を〈ベガ〉による理想郷へと再構築するためだ! そのためにも、私は幾多いくたの〈ベガ〉を傘下に集めねばならんのだ!」
「それが貴公きこうの目的……。地球を〈ベガ帝国〉へと作り変える事が……」敵の真意を自責にも受け取りながら、シノブンは愁訴しゅうそを続ける。「確かに〈ベガ〉は、人間社会にいて忌避きひされる異端者──そうした日陰者に救済を与えんとする貴公きこうの崇高な理念には賛同を覚える。だが、日向ひなたマドカは可能性を示してくれたのだ──我々われわれは分かり合えると。どうか平和的解決を模索し、これ以上の独断的蛮行はめて頂きたい」
「救済? 崇高な理念? 先程から何を言っているのだ? オマエは?」
「……え?」
 豹変した冷ややかさに、シノブンの表情が違和感をびた。
「私は〝ベガによる帝国・・・・・・・〟とは言ったが〝ベガのための帝国・・・・・・・・〟とは一言ひとことも言っていないぞ?」
「で……では、何のためだと?」
「教えてやろう! 我が悲願は、全銀河の〈ベガ〉をはべらかす・・・・・事だ!」
「「「変態だったぁぁぁーーッ!」」」
 異口同音いくどうおんに慄然!
 これまで味わった事もない恐怖だ!
 ってか、変態しかいないのか!
 この小説!
「クックックッ……全宇宙の美少女を〈ベガ〉へと変え、その〈ベガ〉をはべらかす──それこそが、我が悲願!」
 捨てちまえ!
 そんな気色悪い悲願!
「その野望を易々やすやすと諦めろなどと……何様のつもりだ!」
 常識人だよ。
 少なくとも、オマエに比べたら。
「この艦とて、そうだ! 元来は一人乗り仕様だった飛行円盤を、ここまで拡張改造したのは何故だと思っている! それもひとりでコツコツと! 総ては〈ベガ〉をかこためだ!」
 いや、知らないよ。
 妄想モデラーの魔改造製作後記なんか知りたくもないよ。
「男子禁制女人歓迎! この艦こそは、が聖域! 宇宙漂う花園なのだ!」
 うら若き乙女には生き地獄だよ。
 セクハラ監獄だよ、それ。
「そ……そのような理由で? そんな低俗な性癖せいへきに利用されるとは……!」
 唇を噛むシノブン。
 が、このド変態グレイは、さらなる追い打ちを勝ち誇った!
「ギブ&テイクだ! わざわざキサマに花形ベム〈モスマン〉のベムゲノムを与えたのは、我が片腕とするためだったのだからな!」
「な……何ッ? では、私が〈ベガ〉へと新生した元凶も……ッ?」
「私だよ!」
 何を懐かしの〝にしおかす ● こ〟みたいなフレーズ言い出してんだ。この変態グレイ。
「では、自分自身で、私の〈ベガゲノム〉を生み出しておきながら、その改修をエサにしていたというのか!」
「その通りなのだ!」
 ……某〝天才バカの親父〟か、オマエは。
「自作自演ではないか!」
「そうですけど? 自作自演ですけど何か?」
 悪びれる様子もなく、挑発的に首を傾げる。
 グレイがコクン──略して〝グレコクン〟……って、言わないよ!
 クルコクンみたいに可愛くもないし!
「その恩を忘れて裏切るとは……恥を知れ!」
 オマエだよ、変態。
 ってか、価値観相違もはなはだしいな。
 だけどコレってば、クルロリみたいに『宇宙人だから地球常識が判らない』ってヤツじゃない。
 コイツが〝自己中な変態〟だからだ。根本的に。
「……胡蝶こちょう忍軍次期党首〝胡蝶宮こちょうみやシノブ〟ともあろう者が、何という愚かしい道化だ!」
 悄然しょうぜんひざを着くシノブン。
 戦士としてのプライドを知っているだけに、そのさまが痛々しい。
 ……うん、決めたぞ!
「さて、物は相談だが──君達、が片腕になる気はないかね? 今回の件にける君達の能力を、私は高く評価する。容貌ルックス的にも申し分ない。が側近になるというなら、今回の無礼は水に流そうじゃないか」
「冗談は存在だけにして頂けます?」
「クックックッ……ラムス嬢、いいのかね? が勢力が本気を出せば、こんな辺境の惑星などひとたまりもないぞなもしぃぃぃーーッ?」
 問答無用に踏み込み、ボクは渾身こんしんまかせの鉄拳一発いっぱつ
 顔面を殴り抜かれたジャイーヴァは、そのまま後方の機械壁へと吹っ飛んだ!
 そして、ガラガラと崩れ落ちる機材類に呑まれ沈む!
「他の〈ベム〉ならともかく、やっぱ〈グレイ〉はステゴロ・・・・に非力だね」
「相変わらず、躊躇ちゅうちょありませんわね」
 あきれた脱力にツッコむラムス。
「だって、コイツってばムカつくんだもん」
「まあ、御気持ちは分からなくもないですけれど。地球を盾に取られて脅されたのでは……」
「ああ、そっちじゃないそっちじゃない」
「はい?」
「これはシノブンの分だよ」
 快活サムズアップを、当人へと向ける。
 シノブンは、しばし戸惑いの表情を返し──やがて困惑に瞳をらした。
 と、その直後!
「クックックッ……それでこそ、日向ひなたマドカ嬢だな」
 不意に聞こえるジャイーヴァのふくみ笑い。
 当然、瓦礫の山からだ。
「元気があってヨロしーーい!」
 機材の重石おもし退け、爆噴ばくふん復活しやがった。
 校長先生みたいな賛辞を雄叫おたけんで。
「前言撤回。案外タフだったね」
「クックックッ……残念だったな? が体質の秘密を解き明かさぬ限り、キミ達に勝機は無いのだよ!」
 今度は〝南斗の聖帝〟みたいな事を言い出した。
「さて、本当は不本意だが……こちらも切り札を出させてもらおうか」
「ふぇ? 切り札?」
まんいち、このような事態におちいった事を想定して、日向ひなた嬢への対策を準備させてもらったのだよ」
 自信満々に誇示して、細長い指をパチンと鳴らす。
 それを合図と感知したか、部屋の奥から硬い足音が木霊こだまして来た。
「ふぅん? ボクにあてがう用心棒……ってトコ?」
如何いかにも」
 余裕ぶって構えながらも、ボクの内心はドキドキバクバク。
 また面倒なのが増えそうだ。
 こういう〝対 ● ● 用として生まれた悪の戦士ライバル〟って、粘着気質なヤツが多いモン。
 の〝ハカ ● ダー〟といい〝バイオハンター・シ ● バ〟といい〝シャドー ● ーン〟といい。
 ってか、もしくは〈ブラックマドカ〉とかじゃないだろうな?
 ボクを黒塗りしたようなヤツ。
 玩具メーカーが『限定モデル』とかそれらしい希少価値感を銘打って、ただの色替え商法で楽に稼ぐヤツ。
 そんな黙想に脱線していると、やがて暗がりから刺客の容貌が浮かび上がってきた。
 その姿を視認して、ボクは驚愕に固まる!
「……え? ジュン!」

私の作品・キャラクター・世界観を気に入って下さった読者様で、もしも創作活動支援をして頂ける方がいらしたらサポートをして下さると大変助かります。 サポートは有り難く創作活動資金として役立たせて頂こうと考えております。 恐縮ですが宜しければ御願い致します。