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経営組織論と『経営の技法』#328

CHAPTER 12.3.3:変化に対応する ②対応その1 動き続ける
 1つ目は、均衡状況を作ろうとしないことです。つまり、先のように安定した状況を生み出そうと考えないことが必要です。なぜなら、組織に安定した状況を作り出しても、それはまた環境の変化によって安定的ではなくなってしまうからです。
 むしろ、絶えず変化をすることを促すことのほうが、結果として組織の中の混乱を少なくすることにつながります。自転車は漕ぐことで安定していき、スピードを落とすほど安定感が失われていきます。これと同様で、元来不安定な環境にいる場合には、止まった安定的な状況をめざすよりは、動いていたほうが転びにくいことは、組織でも同様です。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』281~282頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 常に組織変革が起こっている会社組織で、変革に対応できるための条件が4つある、と前回部分で指摘されています。今回は、そのうちの1つ目です。
 上記本文で指摘するとおり、1つ目は均衡状況を作ろうとしない、つまり立ち止まろうとせず走り続ける、ということです。会社組織で、チームリーダーが重要だということは繰り返し指摘していますが、走り続ける状況下でのチームリーダーの役割を考えると、それぞれが面倒を見ている従業員たちにも常に変革させ続けることが最大の役割になるでしょう。従業員たちにとって常に変化し続けることは決して楽ではないでしょうが、それを日常として定着させることが必要です。
 従業員やチーム、さらに会社のベクトルを揃えることが重要、という説明も可能でしょう。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 投資家である株主から投資対象である経営者を見た場合、立ち止まろうとせずに変化し続けるように組織をコントロールできることが重要な資質になります。これをさらに具体化していくと、変化し続ける方向を見極め、その方向性を組織内に徹底し、さらにそれを実行させ続けることや、方向を改めるタイミングを見極めるなど、組織運営に関わる全ての問題がこれに関わってきます。
 特に、立ち止まって安定した状況にあるわけでなく、日常的に変革するのですから、日常的にかじ取りが必要になります。スキーに例えれば、急なコブ斜面でのウェーデルンのようなものでしょう(分からない人にはすみません)。経営者自身も走り続けなければならないので、経営者にとっても決して楽ではないはずです。

3.おわりに
 泳ぎ続けなければ死んでしまうサメのようなイメージかもしれないですね。
 変化し続ける場合には多少の失敗も許し、チャレンジし続けること自体を評価してあげることも、重要なポイントでしょう。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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