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経営組織論と『経営の技法』#214

CHAPTER 9.2.2:キャリアアンカー ⑨ライフスタイルの調和
 8つ目のキャリアアンカーは、ライフスタイルの調和と呼ばれます。
 個人の欲求、家族の欲求、仕事における欲求のどれもそれなりに満たしたいと考える人です。つまり、仕事のために自分の(仕事以外で)やりたいと考えていることや、家族が自分に求めることを諦めたり、家族や自分の欲求のために仕事をおろそかにするといったように、仕事と生活のどちらかを重視すること、どちらかを犠牲にすることを望みません。仕事と生活の両方で充実感を感じるようにキャリアを歩んでいこうと考えているのが、このキャリアアンカーを持つ人の特徴です。
 近年、ワークライフバランスという考え方が注目されていますが、ライフスタイルの統合のキャリアアンカーを持つ人にとって重要な考え方といえます。住む地域を限定するエリア社員といった処遇が最近は見受けられますが、これは、このアンカーを持つ人にとっても、有効な施策であるといえるでしょう。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』208頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018.2.1)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 このタイプの人は、性格的にそのようなタイプであることが元々の分類上のタイプになるはずですが、生活環境上、好むと好まざるとにかかわらず、ワークライフバランスを両立させることが最大のポイントになっている会社従業員が、特に共働きが多くなってきて、多く見かけるようになりました。子育てをしながらの共働きでは、子供の送り迎えや炊事洗濯掃除など、家事をこなすことと、仕事をこなすことの両立が必要だからです。
 そのようなタイプで、しかも会社から信頼されて仕事を任されている人は、限られた時間の中でしっかりと仕事をやり遂げるため、勤務時間中の集中力も凄まじく、うかつに甘えた相談事などできません。中には、思いっきり時間を気にせずにじっくりと仕事に没頭したい、と言っている人もいます。
 仕事と家庭の両立というと、仕事への取組みが甘いと思われたり、大きな仕事を任せられないと思われたりしがちですが、最近は仕事でも頼りにされ、任されているタイプの会社従業員も増えています。少子高齢化で働き手が減ってきている現在、会社としても、このような人材のやる気と能力を引き出す制度上、運用上の工夫が必要です。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 ここのところ、何度か指摘している(例えば、#204)企業の社会的責任の観点から見ると、この「ライフスタイルの調和」タイプの従業員が活躍している会社は、従業員の家庭生活や社会生活を大事にしている会社として、社会から評価される点が多いと思われます。何も、地球全体の環境問題などのような大きなテーマばかりでなく、このような身近なテーマから着実に実践していく、という「企業の社会的責任」に関する活動も、ありうるところです。

3.おわりに
 キャリアアンカーについて、8種類のタイプを検討してきました。
 会社組織論としてみると、似たタイプで集まって、一体性や突破力を高める方法から、逆に、様々なタイプで集まって、多様性を高める方法まで、様々な経営手法があります。また、会社組織の内部の問題として、会社人事はこのようなタイプの違いも十分理解したうえで、チーム編成や処遇などのあり方を考えていくことになります。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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