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経営組織論と『経営の技法』#267

CHAPTER 11.1.1:資源の依存度の要因 ①3つの要因 ❷資源の入手可能性
 資源の依存度を決める2つ目の要因は、その資源の入手可能性です。もし必要な資源が特定の組織からしか得られないものである場合、その資源を持つ組織に対しての依存度は高くなってしまいます。なぜなら、その組織からしか資源が得られないからです。
 たとえば、パンに使われる小麦粉にはさまざまな種類がありますが、もし自分たちのパンの味を出すために特定の小麦粉を使用し、その小麦粉が特定の業者からしか入手することができないとすると、パン屋さんはその特定の業者に対しての依存度が高くなり、影響力を持たれてしまいます。もし、その業者が小麦粉の価格を上げることを申し出てきても、パン屋さんは他の業者からその小麦粉を入手することができないので、値上げを受け入れる他ありません。
一方、もし他でその特定の小麦粉を売っている業者との取引が可能になれば、依存度は下がり、場合によっては値上げを受け入れずに済むかもしれませんし、小麦粉の業者も、これを機会に取引相手を変えられては困りますから、価格を上げたくても簡単には上げることガできなくなります。ですから、独占的にある資源を持っているという組織は、その資源を使用したい組織からすると、大きな影響力を持つことになるのです。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』248頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 資源の入手可能性が依存度に影響を与えることも、上記本文のわかりやすい説明により、容易に理解できるでしょう。
 これに対し、前回#266で検討したように、資源の依存度への対応には様々な方法が考えられるなか、そこで検討したように資源を獲得する複数のルートを確保しておく方法が、上記本文でも紹介されています。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 ここでも、前回#266と同様のことが指摘されます。すなわち、経営者は市場での競争に夢中になるだけでなく、資源の依存度によって足元を掬われないように常に気を配っていなければなりません。特に、パン屋と小麦粉の問題のように、新しいパンを開発するときに、業者からとっておきの小麦粉を紹介され、それでなければできない味を開発する場合を考えてみましょう。最初は、他のパン屋さんを出し抜き、競争力・存在感を獲得するために必死ですから、後先を考える余裕もなく飛びつくことになるでしょう。このような事情から、特に商品やサービスの競争力や個性に関わる特殊な資源であればあるほど、最初から複数の仕入先を確保することは現実的にとても難しい場合が多いでしょう。
 けれども、その新商品が軌道に乗ればそれで安心するのではなく、資源の依存度による拘束から解放されるために新商品を独り立ちさせることを考えなければならないのです。

3.おわりに
 例えば、レアメタルに依存していた製品や、オゾン層を破壊する物質に依存していた製品に関し、他の原材料に置き換える研究開発が行われるなど、資源の入手可能性への会社の対応は現実の経営問題です。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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