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経営組織論と『経営の技法』#262

CHAPTER 11.1:資源依存パースペクティブ ①イメージ
 組織活動を行ううえでは、自分たちと異なる目的を持つ他の組織の影響はなるべく受けたくはありません。しかし、どうしても他の組織の力を借りなければ、目的が達成できないことも少なくありません。もちろん、これは他の組織にとっても同様のことです。
 このような組織と組織の関係は、資源の依存関係で成り立っていると考えることができます。つまり、ある組織が自分たちに必要な資源を持ち、一方で自分たちが他の組織が必要としている資源を持っているということです。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』245~246頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 この、駆け引きや競争が必要な状況やそれが会社組織の在り方に与える影響を、分析する視点として、資源の依存関係という切り口が示されました。外的な要因が会社組織に影響を与える場面の1つとも言えますが、競争の過程が会社組織に影響を与える場面の1つとも言えます。
 資源の依存関係を、スポーツ選手の身体に例えると何に例えられるのか、という問題ですが、競技種目によっては競技に必要な道具であったり、必要な筋力や能力を身に着けるための必要な食事であったりするでしょう。また、同じ競争でもスポーツではなく、モノづくり選手権のような競技であれば、モノづくりに必要な材料と例えられるでしょう。
 このような「資源」が、会社組織の在り方に与える影響を考えていきましょう。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 前回#261に指摘したとおり、経営者は、スポーツ選手の身体に相当する会社組織を動かす役割を担いますが、この全て(駆け引きをすることも、競技本来の競争をすることも、さらにそのために体を鍛えること)をバランスよく継続的に行うことが必要です。投資家である株主から投資対象となる経営者の資質の問題として見た場合、このようなトータルな能力が求められるのです。
 そのうえで、これらの関係をより的確に把握するに、「資源の依存関係」を分析ツールとして使いこなすことを検討しましょう。

3.おわりに
 必要な資源を獲得するために、会社の組織自体を変えていく、というイメージは、道具を使う競技の場合に使う道具の性能に合わせて戦略を立てるとともに、その戦略にあった運動能力を鍛え、身体を作り直す場合に近いでしょう。具体的には、卓球の場合、ペンホルダーとシェイクハンドでは、握り方が違うだけでなく、得手不得手が異なり、戦略が異なってきますし、ラケットの振り方に始まり、ポジションの取り方やそこに向けた動き方も異なります。当然、集中的に訓練すべき動き自体異なってきますし、必要とされる筋力も異なってきます。
 このように、競争の内容や戦略と、会社組織の在り方の関係を考えていくのです。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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