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経営の技法 #23

3-4 リスクセンサー機能
 リスク対応のポイントを2つに整理した場合、「リスクセンサー機能」と「リスクコントロール機能」をどのように会社に埋め込むか、が重要となる。このうちの「リスクセンサー機能」は、従業員全員が「神経」として機能する状態を作り出すことがポイント。

2つの会社組織論の図

<解説>
1.概要
 ここでは、以下のような解説がされています。
 第1に、会社を人体に例えつつ、会社のリスクセンサー機能とリスクコントロール機能について、その考え方を説明しています。
 第2に、リスクセンサー機能を全身に巡らされた神経に例えつつ、その担い手は特定の部門や担当者ではなく、現場社員全員であることを説明しています。
 第3に、現場のリスクへの感度を高める方法として、難しい知識よりも、各現場に求められる感性のイメージであることを説明しています。
 第4に、現場が気づいたリスクが素早く伝達されるための様々な工夫を検討しています。
 第5に、情報は自動的に集まるものではなく、意識して情報が集まるような体制を作り、維持しなければならないことを説明しています。

2.リスクセンサーに気付いた経緯
 私が社内弁護士になった当初、社外弁護士と会社との関係と同様、「リスクAが無いか、a、a’、a’’、・・・のような事実を調べてください」とお願いして、リスクの有無をはっきりさせるものと思っていました。
 ところが、上から現場に、特定のリスクの有無を問い合わせるべき場合もあるでしょうが、むしろ、上の方では気付かないリスク(あるいはリスクのサイン)こそ、現場に気付いて欲しいものであること、これは、社内弁護士がいくら会社に詳しくなっても限界があること、に気付きました。むしろ、そのように現場に思わせてしまうと、現場が自分でリスクに気づくことをしなくなってしまう(興味を失ってしまう)ことになりかねないこと、に気付きました。
 この段階では、まだ漠然と「リスク」についての問題意識があっただけで、「リスクセンサー」「リスクコントロール」に整理されていませんが、実際に会社の中での法務の機能を実感する中で、現場こそがリスクに関わらなければならないことに気付いたのです。

3.おわりに
 私の当初の問題意識は、法務部門が未成熟な会社に対する社外弁護士の接し方そのものです。
 すなわち、顧客会社が社外弁護士や法律事務所なしにはいられない状態、言わば「中毒」にしてしまうことで、仕事が沢山来ますから、「会社のため」と言いつつ、会社の体質や体制に関する部分については、会社の自主性や自立を本当には望んでいない面があるのです。
 私が、リスクに対する現場の役割に気付いたのは、社内弁護士の役割と社外弁護士の振舞いの違いに気付き始めた時期でもあります。

※ 『経営の技法』に関し、書籍に書かれていないことを中心に、お話していきます。
経営の技法:久保利英明・野村修也・芦原一郎/中央経済社/2019年1月



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