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経営組織論と『経営の技法』#11

CHAPTER 1.2.2:組織の持つ特徴①

①さまざまな組織の活動やその体系は組織設計によって意図的に形作られており、それらは日常的な組織における実践や具体的な構造として示されているのが普通です。たとえば、学校にはそれぞれの学校のやり方があり、それぞれの学校は組織的特徴によって形成されています。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』7~9頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018.2.1)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村・久保利・芦原/中央経済社 2019.2.1)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 ここでは先に、下の正三角形から検討します。
 これはまさに会社組織そのものですが、会社は、まず第1に、「儲ける」ための組織となっています。ここでも何度か繰り返していますが、リスク管理の観点から見てみましょう。
 「儲ける」ためには、リスクを取ってチャレンジしなければなりません。リスクを取らなければ儲けられないことは、古今東西の共通の真理です。そして、永続的な企業として持続的に「儲ける」ためには、博打では駄目で、リスクを適切に分析し、必要な対策を講じ、取れるリスクにしたうえで、リスクを取るかどうかの決断をします。決断をするための十分な検討をできること、すなわちリスクコントロール機能が、会社組織には必要です。
 さらに、その前提として、リスクに気付かなければならず、しかも会社にとってリスクは、会社の内と外、そこら中に存在しますから、人間の体の表面の神経が、例えば蚊に刺された、というような微細な情報も漏らさず拾い上げ、脳に伝達するように、会社の全従業員がリスクセンサー機能を果たさなければなりません。
 このような、リスクセンサー機能とリスクコントロール機能は、現場から経営に向かって情報が上がっていく方向ですので、ボトムアップが中心になります。
 逆に、経営者がリスクを取る決断をすれば、今度は全社一丸となってその決定を実行します。ここで、自分達は反対だから、と言って決定に従わないことになれば、組織は崩壊してしまいますので、組織の一体性を維持し、規模のメリットを発揮することが重要です。このように、決めたことをやり遂げる、という局面では、トップダウンが中心になります。
 そして、前者のリスクセンサー機能・リスクコントロール機能のボトムアップ部分と、後者のトップダウン部分を合わせて、組織の在り方を説明する言葉として、「衆議独裁」という言葉があります。「独裁」という毒の強い言葉が含まれるので、悪い印象を与えますが、会社組織の在るべき姿を端的に示す言葉として、座右の銘とする経営者が少なからず存在する言葉です。
 会社組織は、数ある組織の中でも、「儲ける」ために、「衆議独裁」を実行する構造となっているのです。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 投資家から見ると、経営者の能力は投資対象です。「儲ける」能力がある人に投資する(株主総会で経営者として選任する、不適任なら解任する)のですが、「儲ける」能力は、スポーツ選手に例えれば、競争に打ち勝つ能力と、そのために必要な身体的な能力を自分自身に備えていく能力です。
 会社組織は、後者の問題であり、競争に打ち勝つ組織作りと、実際にそれを生かして競争に挑む統率力が、経営組織論との関係で重要な能力となります。
 投資家である株主は、投資対象である経営者の資質を見極めるためにも、経営組織論を理解しておく必要があるのです。

3.おわりに
 このように、会社の場合には、ベースの部分に「儲ける」組織としての特徴があり、さらに会社ごとの個性があります。
 鈴木教授が例として挙げる学校の場合には、教育と研究の成果を出すための組織としての特徴があり、さらに学校ごとの個性があります。
 これらの特徴を際立たせる1つの方法として、リスクへの対応、という視点から分析する方法があるのです。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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