見出し画像

経営組織論と『経営の技法』#315

CHAPTER 12.3.1:組織における3つの変革 ②仕事プロセスの変革
 仕事プロセスの変革は、職務の手順や手法、手段の変更を指します。これは組織全体というよりは、職場レベルの変革にあたります。たとえば、生産ラインを、1人の人が1つの工程を担当するようなライン方式から、1人の人が製品の組立てをすべて行うような屋台方式にすることは、仕事プロセスの変革といえます。あるいは、現場で絶えず改善を続けていくことも、この仕事プロセスの変革といえます。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』275頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 リスクを取ってチャレンジすることが利益を上げる方法ですから、会社組織はリスクを取れなければなりません。それも、単に博打のように何の裏付けもなく賭けをするのではなく、十分な情報で十分な検討を行い、経営判断の原則などによってリスクが減るためのプロセスを踏まえた決断をできる組織でなければなりません。
 この観点から見ると、確かに現場の業務プロセスの変革も重要ですが、リスクを取るための組織の意思決定プロセスの変革も重要です。十分な情報が共有されないままプロセスが進んだり、検討不十分なままプロセスが進んだり、時間ばかりかかる割に大したことのない決断しかできなかったりする場合には、経営判断の意思決定プロセスも見直す必要があるでしょう。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 上記本文にあるような、製造工程の変更は、多くの場合現場での創意工夫で対応すべき問題でしょうが、経営者が乗り出すべき場合も多く考えられます。
 それは、特に現場の「成功体験」が強かったり、品質などに強いこだわりがあったりして、現場自身が変えられないような場合です。任せる経営のように現場に任せることを基本とする経営の場合でも、このような場合には経営者が現場の反対を押し切って変革させるべき場合があるでしょう。
 投資家である株主から投資対象である経営者を見た場合、経営者にはこのように責任を取って会社組織を変革していくリーダーシップが必要であることが分かります。

3.おわりに
 リスクを取れる経営を目指す立場からは、特に組織の意思決定プロセスの変革にこだわりたいところです。会社がチャレンジできるようなリスク管理は、特に社会の変化が激しく、多様性を前提にした判断が求められる時代には、多様な情報や意見の優劣を決められませんから意思決定のプロセスで決断せざるを得ないからです。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


この記事が参加している募集

推薦図書

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?