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経営組織論と『経営の技法』#342

CHAPTER 12.4:Column パワー構造の変革の難しさ ②理由その1 コミットメント
 パワー構造が変わりにくい理由は、パワー構造が固定化する傾向があるからです。それをもたらすものとしてはコミットメント、パワーの自己強化、パワーの制度化の3つの要因があります。
 コミットメントは、過去の意思決定に縛られること、特に成功した意思決定に縛られることを指します。たとえば、これまで多くの投資をしてきたがなかなか目が出ない事業があるとき、過去の投資分があるために、「もう少し投資したら何とかなる」といったように継続的な投資に意思決定が向かいがちになります。そして、これらのコミットメント行動は既存の行動を継続することになりますから、これまでのパワーを持っている人が、そのままパワーを持ち続けることにつながりがちになります。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』288頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 ここでも、前回#343と同様にパワーを組織変革のエネルギーにする場合を考えてみましょう。
 すなわち、過去の意思決定を組織変革のエネルギーにするのです。過去の意思決定をそのまま繰り返すのであれば組織変革になりませんが、過去の意思決定と同様の方向性で上手にそれを修正しながら組織変革する方法が考えられます。特に、大きな変革ではなく小さな変革を重ねていく場合には過去の意思決定の方向性を変える部分も小さくてすみますので、小さな変革の場合に使いやすいツールと言えるでしょう。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 投資家である株主から投資対象である経営者を見た場合、過去の成功体験が邪魔をして組織変革できないというような経営者であれば、経営者としての適性に疑問を抱くでしょう。組織変革が必要と考えるのであれば、過去の成功体験もツールとして使いこなすしたたかさを有するかどうかを見極めるのが、経営者選びのポイントの1つになります。

3.おわりに
 既存のパワーを改めるような大きな組織変革の場合には、たしかに上記本文で述べられたように過去の意思決定が障害になってくるでしょう。その場合には、過去の意思決定を改めなければならないというコンセンサスを取るところから手を付けなければなりません。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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