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経営組織論と『経営の技法』#189

CHAPTER 8.4:組織エコロジー論 ①意義
 コンティンジェンシー理論では、組織は環境に合わせて適合することが重要であることがいわれました。つまり、環境が変わったのであるならば、それに合わせて組織構造を変えていく必要があるということです。
 しかし、本当に組織は環境に合わせて適宜組織構造を変えることができるのでしょうか。私たちも状況に合わせて態度や行動を変えることが大事だといわれますが、そう簡単に自分のタイプを変えることができるでしょうか。
 また、先の節では組織フィールドという視点から環境と組織との関係を見てきました。つまり、制度的環境が1つの組織に与える影響について考えてきたのです。しかし、同じ組織フィールドにいる組織はそれぞれが等しく、組織群として環境からの影響を受けることもあります。
 たとえば、恐竜は環境の変化によって絶滅したといわれていますが、これは環境が個別の恐竜に影響を与えていたと同時に、恐竜という種に影響を与えているとも考えることができます。同様に、産業や地域においても、環境は等しく同じような特性を持っている企業組織に影響を与えると考えることができます。
 このように環境が種に対して圧力をかけ、新しい種の誕生や盛衰、絶滅によってさまざまな種からなる企業組織の生態系を説明する考え方を組織エコロジー論と呼んでいます。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』190~191頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018.2.1)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019.2.1)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 リスク管理(リスクを取ってチャレンジするためのリスク管理)の観点から見た場合、ここでは、環境リスクに対する組織として対応可能な限界を超えるような場合を議論していることがわかります。
 対応しようとしても無駄、という状態が想定されるとき、会社組織はどうすべきでしょうか。
 そのような事態に対しては、シナリオとして、清算シナリオを準備しておく、ということでしょう。所詮、会社組織は、経営者の株主に対する「適切に」「儲ける」というミッションを満たすためのツールでしかありませんから、そのツールが使えなくなった事態が想定されるのであれば、そのツールをいかに処分して株主に返すのか、というプランを決めておくことが、行き当たりばったりで無駄な努力を重ねるよりもよっぽどマシです。
 つまり、リスクを「回避する」ことは無理でも、「減らす」ことは可能ですから、これをいかに減らすのか、ということがリスク管理上のポイントになるのです。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 投資家である株主から経営者を見た場合、経営者は投資対象です。「適切に」「儲ける」のがミッションですから、託された資産をこれ以上増やせない状態になれば、できるだけ少ない損失に抑えて投資家に還元しなければなりません。
 そのためにも、できるだけ頑張って事業継続に努力してもらうことも重要ですが、損失が変に拡大するよりも先に事業に見切りをつけてくれる能力、投資で言えば「損切り」の能力も必要です。

3.おわりに
 このように、コンティンジェンシー理論は、環境変化に対応できるかどうか、という点に主眼がありますが、会社経営の観点から見た場合には、このうちの環境変化に対応するためにどうするのか、という点だけでなく、環境変化に対応できなかったらどうするのか、という点も検討すべき過大なのです。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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