経営組織論と『経営の技法』#38

CHAPTER 2.2.3:水平分業のメリット・人的資源の活用
 次に、機能別分業のメリットについて考えましょう。機能別分業は、1つの仕事を機能別に複数のサブタスクへと分け、それぞれのサブタスクの成果を合わせることで1つの仕事を成し遂げます。そのため必要とされるスキルや知識は、1つの仕事を1人で行うよりも少なくなります。このことによって人的資源を有効に活用することができます。
 たとえば、学習塾で英語と数学を教える人を雇いたい場合、英語と数学の両方を教えることができる人を2人探すより、英語を教えられる人と数学を教えられる人をそれぞれ1人ずつ、2人を探すほうが簡単なはずです。また、英語も数学も教えられる人のほうがどちらかだけを教えられる人よりも希少ですから、教科ごとに雇うほうがコストがかからない可能性があります。これも英語と数学を教えるという仕事が機能的に分業されているために得られるメリットです。
 より広い視点で考えれば、企業組織あるいは社会において、抱えている人の能力を有効に活用する点でも、機能別に分業することには意味があると考えることができます。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』31~32頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018.2.1)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村・久保利・芦原/中央経済社 2019.2.1)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 今日の話は、前日のたとえ話でいうと、各部門の法務に関する問題を担当するために、法務に詳しい担当者を雇い、法務部を作る点がこれに当てはまるでしょう。法律のことに詳しくない従業員に法律の勉強をさせ、法務の業務に耐えられるように育てるコストよりも、最初から法律に詳しい従業員を雇った方が、コストも時間も節約できそうです。さらに、会社の業務でより専門性の高い法律問題が多い会社の場合には、社内弁護士を雇った方が、より効果的でしょう。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 このように見れば、ガバナンス上の問題は、前日と同じことになります。
 すなわち、株主と経営者の関係で見た場合、共通費の節約はコスト削減につながりますので、会社の生産性を高め、会社の価値を高めます。収益率と同時に会社の価値も上がるので、投資家にとっては、当然喜ばしいことです。

3.おわりに
 コスト削減の意味で、会社の競争力を高めるだけでなく、業務の専門性が高まりますので、その点でも競争力が高まります。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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