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経営組織論と『経営の技法』#212

CHAPTER 9.2.2:キャリアアンカー ⑦奉仕・社会貢献
 6つ目は、奉仕・社会貢献のキャリアアンカーです。キャリアを考える3つの問いの最後に自分の価値や意義に関する質問がありましたが、奉仕や社会貢献のキャリアアンカーを持つ人は、能力や動機よりもこの価値や意義にキャリアが方向づけられている人といえます。ですから、自分の大事にしている中心的な価値観を仕事の中で具体化したいという考えを強く持つ人といえます。典型的には、医療や看護、社会福祉事業 や教育といったような大義につながりやすく、社会や人々に奉仕する仕事が望ましいと考えます。また、たとえ企業組織の中のメンバーであっても、このキャリアアンカーを持つ人は企業組織を超えた大義のために身を奉じるのが特徴です。たとえば、製薬会社に属していても、自分の仕事はより多くの患者を治すことだ、という価値観を大事にして仕事をするケースがこれにあたるといえます。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』207頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018.2.1)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 会社も大きくなり、企業の社会的責任を意識すべき存在になってくると、会社が社会に受け入れられるためにすべきことが急激に増えます。広報、財務、人事、営業、総務など、関係する部門も幅広く、企業の社会的責任を主管する責任部門(責任者)、たとえばCSR担当を定めるなど、バラバラに対応するのではなく、会社が一体となって取り組むことが重要です。
 たしかに、会社の経営を安定させなければいけない段階では、そんなことよりもまずは会社の経営だ、ということになります。
 しかし、一度、会社経営が安定し、企業の社会的責任を果たそうという場面になると、経営者が旗を振るだけではなく、全従業員がこのような意識を共有することが重要です。そのためのコアになるのは、企業の社会的役割の重要性を熟知し、それを高めようとする熱意です。そこでは、この「奉仕・社会貢献」をキャリアアンカーとする従業員たちが、このコアになってくれることが期待されます。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 会社経営者のミッションは、「適切に」「儲ける」ことです。
 繰り返し検討してきたように(例えば、204)、経営者は企業を社会に受け入れられるようにしなければなりません。
 そのためにも、このタイプの従業員も大切にしておく必要があるでしょう。

3.おわりに
 本文で指摘するように、会社の存在意義が社会貢献であれば、このタイプの従業員はまさにぴったりです。けれども、これに限られず、様々な会社で活躍の場があるはずなのです。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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