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経営の技法 #13

2-2 社外取締役
 社外取締役は、会社の関係者でない人、という意味ではない。社長ではなく、株主がボスであることと、経営の専門家であって、社長をはじめとする経営陣を牽制し、チェックできることの2つが、その条件である。

2つの会社組織論の図

<解説>
1.概要
 ここでは、会社法の解釈論ではなく、本来のガバナンスの在り方として、社外取締役の地位や役割が論じられています。
 第1に、社外取締役は社長の部下ではなく株主の部下であり、内部統制(下の正三角形)上の機関ではなくガバナンス(上の逆三角形)上の機関です。
 第2に、実際に社外取締役が経営のプロとして経営者へのチェック機能を果たし始めれば、まずは経営者から意識改革が行われるでしょう。経営のプロを経営のプロがチェックし、その評価いかんでは解任されることもあるからです。
 第3に、社外取締役の実効性を確保するためには、①経営者の部下としての内部統制上の立場と、経営者を監督するガバナンス上の立場を兼務させないこと、②同じ経営のプロである社外取締役のお墨付きを得ることは、経営判断上非常に心強く、有意義であることを経営者が十分理解すること、が必要です。

2.運用
 現実には、社外取締役に「有意義なアドバイス」「経営に役立つコメント」等を求め、上記のような「経営の監督」「経営のプロによる経営への牽制」等を求めることは、あまりないようです。
 つまり、社外の人材を経営強化のために導入する、という発想であり、コロンブスの判断をチェックするために航海のプロを乗り込ませる、という発想ではありません。
 株主がこれで良い、というのであればこれで良いのかもしれませんが、本来の社外取締役に期待される役割とは違うものであることの認識だけは、最低限必要です。

3.おわりに
 「所有と経営の分離」が株式会社制度の制度目的です。
 したがって、所有者である株主からの干渉は最小限にすることが、株式会社制度の重要な内容です。
 しかし、経営者の選解任権は所有者にあり、経営者はいわば「チーママ」「雇われマダム」にすぎません。任せたお店の運営がまずければ、理由もなく解雇される立場にあり、しかも、時々お店の様子をチェックされるべき立場にあります。
 誰でも、自分の仕事をチェックされることは、どこか不快感や違和感を覚えることですが、経営者はこれを当然に受け入れ、逆に使いこなす力量が必要です。責めは強いが守りは弱い、である限り、透明性が高い経営はできないのです。

※ 『経営の技法』に関し、書籍に書かれていないことを中心に、お話していきます。
経営の技法:久保利英明・野村修也・芦原一郎/中央経済社/2019年1月



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