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経営組織論と『経営の技法』#292

CHAPTER 11.3.1:ハイアラーキー型組織とネットワーク型組織
 市場や階層と区別されるネットワーク型の組織は、相互に繰り返され、継続される交換関係を持つ一方で、交換に応じて生じる揉め事を解決するための正統的な権威を持たない集まりという特徴を持っていると考えられます。
 つまり、階層では正統的な権威を持つネットワークの参加者が揉め事を解決し、市場では取引は関係の継続性が必ずしもあるわけではない、という点で異なるわけです。このネットワーク型組織の特徴は、市場や階層と比較して、表11-1 のようになります。

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 より詳細に、これらの違いからネットワーク型組織の特徴を見ていくとネットワーク型組織では、組織間ではお互いさまの関係や評判が組織を束ねるメカニズムを担っていることがわかります。また、ネットワーク型組織では、友好的で開放的な相互依存関係に基づく、情報交換や学習の促進、そして協働や信頼の創造です。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』261~262頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 ネットワーク型組織を理解するために、上記本文は市場型と階層型を対比させています。
 これを見ると、伝統的にイメージしやすい階層型の組織に対比されるものとして市場型が置かれていることが分かります。すなわち、ビジネスの一部の機能を提供する事業会社や個人と、必要な場合に契約して必要なサービスの提供を受け、仕事全体を仕上げていく場合に、その提携先の事業会社や個人も含めた全体を組織としてとらえているのです。
 そうすると、その中間形態であるネットワーク型も当然、そこに参加する事業会社や個人まで含めた全体が組織を構成し、組織に含まれることが理解できます。
 そこでは、契約のような法的な拘束力も、雇用のような人事権に基づく指揮命令関係も存在しません。拘束する確かなものが何も存在しない中で、しかし組織として一体性を維持して活動し、成果を上げていくために、どのようにして多様な事業会社や個人をまとめ上げていくのでしょうか。
 この点を、社外の問題としてではなく社内の問題、すなわち組織の問題として分析する点に意義があるように思われます。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 投資家である株主から投資対象である経営者を見た場合、契約でも人事権でもない曖昧で不確かなものによってチームを束ねていく能力がある経営者は、それだけ選択肢が広がることになりますので、このような経験や能力も、経営者の人選の際に考慮するとよいでしょう。

3.おわりに
 会社内の組織論としても、会社外の取引問題としても、いずれも人事権や契約のように確かなものによるコントロールがツールですから、このように不確かなものによるコントロールは、特に弁護士として法に関わる身としては非常に興味があります。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。





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