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経営組織論と『経営の技法』#187

CHAPTER 8.3.2:3つの制度的同型化 ⑤模倣的同型化
 模倣的同型化は、組織の中で手段と目的の関係が曖昧であったり、組織の技術がよく理解されていなかったり、目標が曖昧なとき、あるいは環境が不確実であるときに、組織フィールドの組織間で模倣行動が促され、模倣的同型化が起こります。組織は、他の成功している組織やすでに正当性を有する組織をモデルとして模倣することによって、不確実なものに対処しようと考えます。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』189頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018.2.1)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019.2.1)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 市場での競争で、製品やサービスの物まねから始めることは、よくあることですが、会社組織についても物まねから始めることがあり、経営判断としてもこれがありうる選択肢である、ということです。
 同じような店構えにして、まずは商売を始めてみて、問題対応や改善をしていくうちに、元のモデルの意味や価値がわかってくる、という面もあるでしょう。全てがわかってからでないとビジネスを始められないのではなく、わからないところは真似でもいいからとりあえず初めてしまって、タイミングを逃さないことも、経営の選択肢になるのです。
 もちろん、特許のように明確なものも含め、物まねが許されない場合や、物まねが非難されて不利益を受ける場合がありますから、経営者は、物まね戦略を取る際には、適切にリスクコントロールし、取れるリスクかどうかを確認しなければなりません。

2.内部統制(下の正三角形)の問題
 リスク管理(リスクを取ってチャレンジするためのリスク管理)の観点から見ると、ここで模倣的同型化が生じる例として示されているいくつかの状況を見れば、組織やプロセスのあり方についてリスク(不確実性など)があり、そのリスクをコントロールする手段として模倣する、という方法が選択されていることがわかります。
 具体的には、会社組織をスポーツ選手の体に例えれば、有力な選手のトレーニング方法や食事を真似し、同じ道具を使ってみたりすることに例えられます。競争が厳しさを増し、他社との差別化がより重要で、細かいレベルでの差別化が重要になってくれば、模倣では済まなくなりますから、スポーツ競技としても、競技自体が成長し、参加者が増え、競争が厳しくなってきた場合の「体」作りは、おのずと変わってきます。
 このように考えれば、「体」作りに例えられる会社組織論で、模倣が通用すべき場合がどのような場合なのかを考えるポイント(状況を見極めるポイント)が、少し見えてきます。

3.おわりに
 まずは、初めてみようという発想は、リスクを取ってチャレンジする、というリスク管理の発想からみて、特に、ある意味の完璧主義によって現状を変えられない多くの会社にとって、重要な発想です。その際、会社組織形態やプロセスのあり方も「模倣」でよい、という視点は、敷居を下げ、変革のために一歩踏み出すきっかけになるでしょう。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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