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経営の技法 #67

7-9 「日本人を送り込むと業績が下がる」のはなぜか?
 海外に事業所(子会社など)を有する日本の親会社が、海外の事業所の経営者として日本人を送り込むと、不思議と業績が下がると言われる。本書の内部統制(下の正三角形)のツール(リスク管理のツール)を、ビジネス上のツールとしても使える。

2つの会社組織論の図

1.概要
 ここでは、以下のような解説がされています。
 第1に、リスク管理と経営が一体であることを確認するために、本書で検討してきたリスク管理のツールを使って、経営の分析をしてみる、と問題設定しています。
 第2に、「組織論」の観点から、関連会社の管理体制として、内部統制(下の正三角形)に近い形態の「内部統制型」の場合に想定されるリスクと、ガバナンス(上の逆三角形)に近い形態の「ガバナンス型」の場合に想定されるリスクに分けて、シナリオを検討しています。
 第3に、「手続論」の観点から、「リスクセンサー機能」に関するリスクと、「リスクコントロール機能」に関するリスクに分けて、シナリオを検討しています。
 第4に、このように、経営上の問題を探すためのストーリー探しのツールとして、リスク管理のツールが活用できる、とまとめています。

2.限界
 とは言うものの、このテーマを実際に読んでくれた読者には、結局、何が原因なのか、ずばり回答を言って欲しかった、という人もいると思います。
 しかし、数多くの日本の事業会社で共通の問題が起こっていて、未だに解決策が見つかっていません。ここでの分析で示された仮説程度のことは、既に十分議論されているはずです。
 それでも、一般的な解決策が見つかっていませんので、ここで導き出されたいくつかの仮説は、それが回答であると考えるのではなく、むしろそれぞれの仮説がどの程度自分の会社に当てはまるのか、したがって、当てはまらない部分についてそれぞれの仮説がどのように修正されるのか、という形で使われるべきです。
 すなわち、リスク管理のツールによって、議論のたたき台となる仮説を導き出すことが可能ですが、実際の検証はより実証的なデータなどによって行われなければなりません。

3.おわりに
 さらに活用されるべきは、日本人を送り込んでも上手くいっている事例の分析です。
 失敗事例と成功事例の比較から、一般的な教訓が導き出せます。
 さらに、自分の会社の状況を分析し、自分の会社と比較することによって、自分の会社に落とし込むことができます。
 このように、様々な切り口から原因にアプローチする際、リスク管理のツールからの分析も、そのうちの一つのアプローチとなるのです。

※ 『経営の技法』に関し、書籍に書かれていないことを中心に、お話していきます。
経営の技法:久保利英明・野村修也・芦原一郎/中央経済社/2019年1月


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