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経営組織論と『経営の技法』#295

CHAPTER 11.3.2:ネットワーク型組織の3つのタイプ
②小企業ネットワーク その2

 2つ目の小企業ネットワークの利点は、個々の組織が小さく、ピラミッド型の階層にならないため、力が分散し、情報の共有が容易になることです。このことによって、企業ネットワークは、環境などの変化に対して柔軟に対応できるようになります。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』264頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 実際にどのように「柔軟に対応」することになるのでしょうか。ヒントは、力が分散すること、情報の共有が容易であること、です。
 具体的にイメージできるのは、様々な業種の会社が集まってプロジェクトを進めている状況で、社会状況の変化によって当初想定していた商品とは違う商品を開発するように変更する場合です。ここで、例えばコアとなる技術が変わるため、従前の商品であればコアな技術を有している会社はプロジェクトにかける時間や労力を減らし、新たに別の会社(次のターゲットのためのコアな技術を有している会社)にプロジェクトへの参加を呼びかけます。このような動きを、上司による命令でも契約に基づく請求でもなく、各メンバー会社が自主的な判断で行うことができる、そのようなイメージです。
 もちろん、各メンバー会社が納得しなければならず、強制的に「組織」の形を変えることはできませんので、各メンバーの同意を取るために手間取る場合もあるでしょうが、その過程で新たなアイディアが出たり、それに応じて無理せずに実現可能な体制に「組織」の形を変えたりできます。それぞれの細胞が主体的に判断して動く中で最適な方向に進むアメーバのようなイメージでしょう。
 この他にも、「柔軟な対応」の具体的な例があるかもしれませんが、いかがですか?

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 この「組織」の構成員となる会社の経営者の場合、それぞれの会社は誰かに命令されたり指示されたりするのではなく自分で判断することが重要となりますから、この「組織」に参加する場合には、その構成員として自主的な判断を責任もって行うことが必要です。

3.おわりに
 この「組織」がアメーバのような形態であるとすれば、構成員をそれぞれ小企業でなく個人に置き換えることで、個人の自主性を重視した柔軟でフラットな会社組織を作れるでしょう。小企業が集まった「組織」は、会社経営のための会社組織論として学ぶべきポイントが多くありそうです。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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