見出し画像

経営組織論と『経営の技法』#260

CHAPTER 10.3.2:実践共同体における学び ③応用とまとめ
 業務外の交流会や勉強会においても、継続的に活動をしていく中で、黙って他人の意見を聞いている段階から、だんだんと発言をしたり、自分が情報を提供する側に回ったりするようになります。このプロセスが学習になるわけです。
 このように考えれば、単にOJTで経験を積ませることや、本を読ませたり自己学習を促したりするだけでなく、このような場を作ることで学習を促すことができますし、職場が実践共同体の色彩を強めるほど、そこで働く人の学びが促進されることになります。また、職場内外の集団を学習が発生する実践共同体であると考えることで、さまざまな学習を促す方法を考えることができるのです。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』234頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 今回も、前回と同様、「人事権」によって実践共同体での教育や学習の機会を増やすことを考えてみましょう。
 例えば、社外の場に参加する機会を増やすため、異業種交流や地域活動、ボランティア活動などに参加することをサポートする方法があります。ボランティア休暇のような制度を設けたり、公的な活動の参加費を補助したりすることが考えられます。
 また、社内で積極的な活動を促すために、調査や準備、資料作成、会議での発表などに関し、若手を主任として仕切らせる方法も考えられます。この方法は、私自身が最初に所属した法律事務所で採用していた方法です。仕事の過程で、先輩弁護士から厳しく指導されましたが、受け身ではダメで、自分から資料を集め、提案していかなければならず、相当鍛えられた、という実感があります。
 このような、制度設計や業務運営の在り方も、「人事権」の使い方です。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 このような方法は、事業によって利益を上げる、という観点から見ると、即効性がなく、費用対効果を厳密に測定できず、したがって、投資家である株主に対して利益を上げなければならない経営者としては、どうしても対応が後回しになります。
 けれども、会社をスポーツ選手に例えれば、目先の試合で少しかっこいいことができても、中長期的に勝負し続けるための基礎体力がなければ、本当に強い選手になれません。
 会社経営者は、市場での競争という競技での技にばかり目を奪われるのではなく、競争で勝ち続けるための体力作りも考えなければならないのです。

3.おわりに
 ここでも前回と同様のことがポイントになります。
 つまり、実践共同体と言える状況は、自然発生的に生まれるものではなく、良い状態での実践共同体は、皆が意識してメンテナンスする必要があることを、理解しましょう。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?