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経営組織論と『経営の技法』#1

CHAPTER 1:組織論とはどのような学問か
「幽霊の正体見たり枯れ尾花」ということわざがあります。恐怖や疑いの気持ちがあると、何でもないものでも恐ろしく感じてしまうという意味のことわざです。しかし反対に考えれば、一歩踏み出して幽霊と思えるものを見つめると、違った姿が見えてくるということでもあります。
 組織というものも、「組織の力に負けた」「組織を利用する」というように何か大きな存在のように見えますが、一歩踏み込んで組織を知ることで、うまく組織を使うことができるはずです。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』1頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018.2.1)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村・久保利・芦原/中央経済社 2019.2.1)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 会社に対する投資家であり、パトロンである株主の立場から見れば、会社組織は、ビジネスを組織的に行って利益を上げてくれる存在です。
 投資家は、会社の収益力や成長力を、様々な指標に基づいて見極め、投資や売却の判断をしますが、会社の財務状況や経営戦略だけでなく、会社組織がどのような構造になっており、実際にそれがどのように機能しているのか、というところまで深く研究して投資する場合があります。日経ビジネスや東洋経済などの経済情報雑誌が、特徴的な会社の経営内容、特に会社内部の組織構造やその活動状況をリポートしているのは、そのような需要があるからです。
 さらに、ここまで踏み込んだ判断をしない場合であっても、投資家は、会社経営者として相応しい人物を選任し、相応しくない人物を解任する、という人事権を有しています(株主総会)。会社経営者が、会社組織を適切にコントロールしなければ、会社は利益を上げられませんから、経営者の人選にとって会社組織とその運営は重要な判断要素となります。
 このように、会社組織は、株主にとって直接・間接に、重要なのです。

2.内部統制(下の正三角形)の問題
 経営を託された社長が、利益を上げて株主の負託に応えるためのツールが、下の正三角形に該当する会社組織です。これをコントロールするのが、内部統制です。
 ここでは、まさに、上記引用部分の最後で指摘されている「うまく組織を使う」ことが、最重要課題となってきます。
 さらに、『経営の技法』の観点から強調しておきたいのは、リスクコントロールとチャレンジです。利益を上げるためにはリスクをとってチャレンジしなければなりませんから、会社組織がリスクを取れる組織でなければなりません。
 ところが、大きな組織になると、社長が旗を振っても「組織が動かない」、社長がブレーキを踏んでも「組織が止まらない」、社長がハンドルを切っても「組織が変わらない」ことがあります。このような事象を解消し、社長が会社組織を責任もってコントロールできる状態にすることも、経営組織論の重要な役割になります。

3.おわりに
 この連載では、鈴木竜太教授の名著『経営組織論』を、『経営の技法』の観点から肉付けしていきます。
 いろいろなご意見、ぜひ、お聞かせください。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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