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経営組織論と『経営の技法』#333

CHAPTER 12.3.4:4つの変化の操縦モデル ①全体の意味
 このように見てくると、組織変革のあり方も見方によって異なることがわかります。安定的な状況を打破するような組織変革では、組織変革は大きく急進的なものになります。そのためにトップとミドルが協力して大きな力で組織を変えていくことが求められます。一方で、常に変化している状況での組織変革は、小さな変化の繰り返しによってなされます。それは環境からの要請でもあり、組織として環境に対応する結果でもあります。どちらにせよ、常に小さな変化を繰り返していくことで、大きな組織変革につながることになります。
 これらの違いを能動的に組織変革を起こすのか、環境の変化などの要請によって受動的に起こすのかといった変革への能動性の軸と併せてみると、図12-3のように、4つの変化のモデルとその変革の行動が示されます。

図12-3

【出展:『初めての経営学 経営組織論』284頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 組織変革のためのポイントが整理されています。
 ここまでの何回かに亘る検討で、このグラフの右下と左上の事象が対比されてきましたが、そのほかの事象を整理してみてみると、たしかにこのとおりと思われます。
 このように大きな観点からの整理は、具体的な変革の方法などを詰めて検討する場面ではあまり役に立たないかもしれませんが、戦略レベルで大きな方向性を決める場面では非常に有効です。ツールとして見た場合、このグラフのように自社の置かれた状況を客観化するための分析ツールも使いこなすことが期待されます。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 投資家である株主から投資対象である経営者を見た場合、経営者には上手に市場での競争を戦うスキルだけでなく、その競争に適した、すなわち市場の状況にあった会社組織を作り上げることも期待されます。当然、市場の状況に応じて会社組織を変革することも必要となります。
 その際、変革のために必要な細かい配慮が必要なことは言うまでもありません。神は細部に宿ると言われることからも、このことは明らかです。
 けれども、木を見て森を見ず、誤った方向に会社組織を変革してしまうわけにもいきません。ここで示されたグラフのような大局的な視点も、経営者に必要不可欠です。

3.おわりに
 組織変革の観点から、上記のようなグラフが作られましたが、会社組織の在り方を考える場合や競争戦略を考える場合に、一見すると大雑把すぎるグラフが自社の置かれた状況を客観化し、戦略や方向性を判断するために役に立つことが沢山あります。大きなレベルで認識を合わせておくことは、会社と経営者、従業員のベクトルを合わせるうえでも有効です。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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